一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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黒ひげと除藻剤と水草について

質問者:   高校生   すこってぃ
登録番号4657   登録日:2020-03-02
 去年から継続して、水槽に除藻剤を入れ、水槽からコケが生えなくなりました。しかし、黒ひげという紅藻類が生えるようになってしまいました。また、光が十分に当たったアヌビアスの幾つかの葉が分解され(?)、葉脈状になってしまいました。アヌビアスはこれまで薄暗いところでも生存可能であったため、光量不足が光合成の限定要因として働き、アヌビアスが栄養不足となってしまったとは考えにくいです。そこで、除藻剤をいれたにも関わらず、どうして黒ひげが生えるようになり、アヌビアスの幾つかの葉が葉脈状になってしまったのですか?
 また、黒ひげは独立栄養生物か否か未だわかっていません。そのため、黒ひげがアヌビアスの葉を分解したと考えるのは可能ですか?もし、黒ひげを従属栄養生物と仮定すると、なぜ紅藻類に分類されているのですか?黒ひげは、どこからこの水槽に入ってきたのですか?(ペットショップ等から魚、水を水槽に入れたのは2年前が最後です。)
 *黒ひげの発生地は水槽の角であると思われ、その付近にアヌビアスがあります。
すこってぃ さん

このコーナーをご利用いただきありがとうございます。
ご質問には神戸大学の村上明男先生から下記の回答文を頂戴しましたので、参考になさってください。

【村上先生からの回答】
水生植物の美しさに惹かれて、魚水槽での栽培をされているようですね。すこってぃさんが育てているAnubiasの自生地の環境条件などはあいにく存じていませんが、一般的にAnubiasは陰性植物(日陰を好む植物)の光合成特性を持ち、生長はかなり遅いそうですね。狭い水槽の中で生き物を飼育・栽培すると、いろいろなアクシデントが起こるものですが、皆さんそれぞれに工夫する楽しみもあると思います。今回のご質問は、むしろアクアリウムショップなどで、こうしたアクシデント経験を豊富にお持ちの方に相談されるのが、解決への近道のように思います。また、「黒ひげ」を顕微鏡で観察したり、水槽のメンテナンス記録を振り返ってみるなど、「黒ひげ」の正体や繁茂の過程をご自身で見極めることも大切かもしれません。

水草や水棲動物を飼育されている方は、見た目を損なう微生物を「コケ」や「黒ひげ」と呼んでおられるようですが、おそらくは珪藻、緑藻、藍藻(シアノバクテリア)などに分類されるさまざまな微細藻類が特に区別されることなく「コケ」などと総称されているのではないでしょうか。これらの藻類は、アクアリウムの中で気まぐれに湧いてくることもあり、分類や代謝生理についての研究は見当たらず、「黒ひげ」の正体も曖昧なままのようです。例えば、ため池の「アオコ」や海の「赤潮」など、ヒトの生活や水産業に悪影響を与える藻類も、分類名ではなく、「黒ひげ」と同様に見た目に基づいて名付けられています。これらは、単一の藻類が引き起こしている訳ではなく、また、水槽内と同様に発生の原因や予測、対策などなかなか難しいようです。ちなみに、水草と藻類はともに、光独立栄養生物で、湖・川・海など水圏の一次生産者として、生態系食物網の基礎を支えています。

最後に、除藻剤についてコメントします。市販の除藻剤にもいろいろなタイプ(化学成分の種類や作用のメカニズムが異なる)があり、目的に応じて使い分けられているようです。これらの除藻剤で憎き「黒ひげ」の繁茂をどこまで選択的に抑制できるかは分かりませんが、同じ光合成機能を持つ水草にも、もしかしたら薬剤が悪影響を与えているかもしれません。


村上 明男(神戸大学内海域教育研究センター)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2020-03-17
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