質問者:
一般
たんぽぽ
登録番号4662
登録日:2020-03-08
はじめまして。小学一年生の子どもと自由研究でタンポポについて調べています。みんなのひろば
タンポポの花茎の色の変化について
近所のタンポポを観察するうちに、花が咲いている状態では花茎が黄緑なのに、花茎が倒れてから綿毛がつく状態では赤紫に変化しているものが多いと気づきました。そして、綿毛が全て飛んでいった頃の時期には再び赤みが抜けていっているように感じます。
本などで調べても花茎の成長については書かれているのですが、色の変化には触れられておらず、どのような作用でこのような現象が起こっているのか分からず困っております。私も植物については詳しくなく、子どもに説明することが難しいので、ぜひご回答頂けますと幸いです。よろしくお願いします。
たんぽぽ様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
タンポポの花茎の色の変化に気づかれるなど、大変細かい現象にも注目なさっておられ、観察が行き届いていますね。素晴らしいことです。
植物の葉や茎が緑から他の色に変わるのは普遍的な現象です。典型的な例は紅葉です。色は赤紫の場合が多いですね。これらの色の元となっている色素のほとんどは、アントシアニンと呼ばれている一群の化合物です。アントシアニンやその生成については、本コーナーで沢山の関連する質問と回答が掲載されていますので、ぜひ参考のために読んでください。「アントシアニン」と検索して下さい。
さて、タンポポの花茎に見られる赤紫の色ですが、それもやはりアントシアニンだとみなしていいでしょう。タンポポの花茎の部分の色素だけを取り出して分析した研究論文は見つけられませんでしたが、タンポポからはアントシアニンが単離されています。これは、 Phytochemistry とい学術誌に発表された論文(1997年)で報告されていることですが、セイヨウタンポポ(Taraxacum offcinale) の培養組織(カルス:質問コーナーで検索してください。)でアントシアニンを作らせで、色素の分析を行ったところ、主要色素はシアニディンマロニルグリコシドという物質の一つであるようです。たんぽぽさんが使ったタンポポは何タンポポかわかりませんが(日本で非常に増えているのはセイヨウタンポポです。ニホンタンポポとの違いは、やはり本コーナーで「タンポポ」と検索してください。)、おそらく同じアントシアニンであろうと思います。タンポポの花茎はふつう薄い緑色/黄緑色であることが多いですが、セイヨウタンポポの花茎の色は緑から紫がかった(purplish)あるいは褐色ががった紫(brownish purple)であると記載されていますので、花茎自体にはアントシアニンを合成する能力があるのでしょう。
ご質問では花茎の変色は花が終わった以降に起きていますね。これはタンポポの開花・種子形成という一連の生殖過程が進行した結果、花茎に生理的変化が生じ、それまで眠っていたアントシアニンの合成に関わる遺伝子が働きを開始したからでしょう。花茎の組織も最終的には老化しますので、アントシアニンも分解され、色が抜けていくものと考えられます。また、アジサイの花の色のように組織細胞の酸性度の変化で色合いが変わることもあります(本コーナーで「アジサイ」で検索してください。)。
ちなみに、アントシアニン合成は紫外線が引き金になったり(登録番号2097, 2207など)、無機栄養分の供給で影響されます(登録番号1903)。植物の葉が赤紫色を呈するようになるのは特にリンの欠乏の場合が多いという報告もあります。管理されていない場所(例えば野外など)で生育する植物は、その生育場所によって様々な環境要因に不均一に曝されていますから、個体による差が多く目立つことはあるでしょう。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
タンポポの花茎の色の変化に気づかれるなど、大変細かい現象にも注目なさっておられ、観察が行き届いていますね。素晴らしいことです。
植物の葉や茎が緑から他の色に変わるのは普遍的な現象です。典型的な例は紅葉です。色は赤紫の場合が多いですね。これらの色の元となっている色素のほとんどは、アントシアニンと呼ばれている一群の化合物です。アントシアニンやその生成については、本コーナーで沢山の関連する質問と回答が掲載されていますので、ぜひ参考のために読んでください。「アントシアニン」と検索して下さい。
さて、タンポポの花茎に見られる赤紫の色ですが、それもやはりアントシアニンだとみなしていいでしょう。タンポポの花茎の部分の色素だけを取り出して分析した研究論文は見つけられませんでしたが、タンポポからはアントシアニンが単離されています。これは、 Phytochemistry とい学術誌に発表された論文(1997年)で報告されていることですが、セイヨウタンポポ(Taraxacum offcinale) の培養組織(カルス:質問コーナーで検索してください。)でアントシアニンを作らせで、色素の分析を行ったところ、主要色素はシアニディンマロニルグリコシドという物質の一つであるようです。たんぽぽさんが使ったタンポポは何タンポポかわかりませんが(日本で非常に増えているのはセイヨウタンポポです。ニホンタンポポとの違いは、やはり本コーナーで「タンポポ」と検索してください。)、おそらく同じアントシアニンであろうと思います。タンポポの花茎はふつう薄い緑色/黄緑色であることが多いですが、セイヨウタンポポの花茎の色は緑から紫がかった(purplish)あるいは褐色ががった紫(brownish purple)であると記載されていますので、花茎自体にはアントシアニンを合成する能力があるのでしょう。
ご質問では花茎の変色は花が終わった以降に起きていますね。これはタンポポの開花・種子形成という一連の生殖過程が進行した結果、花茎に生理的変化が生じ、それまで眠っていたアントシアニンの合成に関わる遺伝子が働きを開始したからでしょう。花茎の組織も最終的には老化しますので、アントシアニンも分解され、色が抜けていくものと考えられます。また、アジサイの花の色のように組織細胞の酸性度の変化で色合いが変わることもあります(本コーナーで「アジサイ」で検索してください。)。
ちなみに、アントシアニン合成は紫外線が引き金になったり(登録番号2097, 2207など)、無機栄養分の供給で影響されます(登録番号1903)。植物の葉が赤紫色を呈するようになるのは特にリンの欠乏の場合が多いという報告もあります。管理されていない場所(例えば野外など)で生育する植物は、その生育場所によって様々な環境要因に不均一に曝されていますから、個体による差が多く目立つことはあるでしょう。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-03-16