一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アントシアニンのph変化について

質問者:   会社員   キビタキ
登録番号4664   登録日:2020-03-11
素人ですがアントシアニン色素について興味を持ち、紅葉した葉のアントシアニン色素のphでの変化を調べたいと思いました。

コナラ、サクラ、イヌタデ、ドウダンツツジ、などの赤い葉を小さく刻みアルコールに浸してアントシアニンを抽出し、そこにアルカリと酸をそれぞれ落として試してみました。

酸性では濃いピンクになりました。
アルカリでは青になるかと思ったら、緑色に変化しました。
石けん水から強アルカリまで試してみましたが、どれも茶系の緑色に見えます。

これは葉に含まれる何かの成分(金属イオンなど)が関係するのでしょうか?

キビタキさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
前提となるアントシアニンのpHによって変化する色彩は、精製したアントシアニン類を用いたときのものです。夾雑物が共存すれば複雑な色彩になるはずですが植物葉の粗抽出物のpH による色の変化を観察した報告は多くないためご質問には「こんなことが起きたのではないか」という可能性を推定してお答えとします。
植物の葉をアルコール(ふつう含水エタノール)に浸すと多くの成分が抽出されてきます。色素(クロロフィル、カロテノイド、アントシアニンなど)以外に糖類、脂質、アミノ酸(アミンを含む)とともに無色のフェノール類(コーヒー酸、クロロゲン酸、カテキンなどのポリフェノール)、その他、ときにはアルコール可溶のタンパク質も含まれることもあります。用いられたのは紅葉した葉のようですのでクロロフィルは殆どなく、ドウダンツツジ以外はアントシアニンの含量は少ないと推定されます。
このような溶液をアルカリ性にすると次のようなことが推定できます。ポリフェノール類は酸素の存在下アルカリ性で容易に自動酸化され、酸化物キノンは重合して褐色物質を生成します。また、アミノ酸類が共存するとクロロゲン酸(コーヒー酸とキナ酸とのエステル)やコーヒー酸エステル類は酸化されたキノンとアミン類(アミノ酸など)が反応して緑色の物質を生成します。
キビタさんがお使いになった葉は紅葉しているのでクロロフィルは少なくなっていますがアントシアニンの含量は比較的少ないと種類です。相対的にクロロゲン酸類やアミノ酸類の量が多めになっていると推定されます。このような溶液を弱いアルカリ性にするともちろんアントシアニンは青色になるはずですが同時に褐色物質と緑色物質も生成するためかなり複雑な色彩となることが予想されます。アントシアニンとポリフェノール類との含量比によって、青色、緑色、褐色がいろいろの混ざり合った結果ではないでしょうか。



今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-04-09