一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の花成について

質問者:   一般   AP
登録番号4666   登録日:2020-03-15
植物の花成について質問があります。
多肉植物を室内で植物育成ライトで育てて花を咲かせることはできないのかを調べています。花を咲かせるためには、日長と温度と光が重要なことまでは調べました。そこで疑問なことが、どの波長の光を当てれば花を咲かせることができるか分かりません。
遠赤色光に花成を促進する効果があるみたいですが、逆に遠赤色光が少ない、又は無い(0)場合では花が咲かないと言うことはあるのでしょうか?
現状使用している育成ライトのRF(730nm)/R(660nm)は1/20ぐらいです。この比率で問題がありますでしょうか?
AP 様

この質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。
室内で育てる多肉植物に花を咲かせようとの意図から、遠赤色光の効果に注目されているようですね。LED光が植物の栽培に利用できるようになり、いろいろな波長領域の光の開花への影響が詳しく調べられるようになっているのが現状かと思います((例)参考資料参照)。最終的には照射光の発光スペクトルと植物側の色素の吸収スペクトルに基づく議論が必要となりますが、報告されている結果では、例えば遠赤色光を赤色光と混合することにより花成への効果の高まりが認められる一方で遠赤色光の照射が抑制的に働く場合があるなど、植物の種類により事情はかなり違っているように見受けられます。ところで、多肉植物と一口で言っても植物の種類としては多岐にわたり、開花の時期や開花の条件についてもいろいろな場合があるようですので、一般論としてご質問にお答えすることは容易ではありません。私が調べた範囲では、多肉植物の開花への遠赤色光の効果について記述した文献を見つけることは出来ませんでした(出来ましたら、多肉植物に詳しい方にご相談ください)。

なお、多肉植物を室内で育てる場合、光合成によるエネルギー獲得(資源の蓄積)が不十分なために開花に至らない場合があると思います。育成ライトとして使用される光では、660nmの光強度に対して730nmの光強度が1/20程度であるとのこと、この事実から推し量るとスペクトル的には光合成の進行に必要な波長領域を十分にカバーしているものと思われますが、室内栽培ですので強度に問題がある可能性が考えられます。植物を窓辺に置くなどして生理活性を高めることが開花のために役立つかも知れません。また、室内で人工光を用いて栽培する場合、光を当てる周期と水供給のタイミングが問題になりますね。

(参考資料の一例)農業・食品産業技術総合研究機構「光花きコンソーシアム」編:主要花き類の開花に対する光質応答反応(2015年3月)HP上の資料

以上、回答とさせていただきます。


佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-03-24
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