一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の成長と酸素の濃度

質問者:   高校生   りゅう
登録番号4671   登録日:2020-03-25
植物は酸素の濃度が高いと成長が早くなったり大きくなったり実をつける量が多くなったりなにか空気中と違いはでますか?
りゅう 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。
現在の地球大気に含まれる酸素は体積比で約21%であると教えられますね。ご質問では、この値より大幅に高い酸素濃度条件下で植物を栽培すると生育が早くなったり実をつける量が多くなったりすることがあるかと問われているものと理解します。植物の生育量は、水分のことなどを無視して単純に表現すれば、光合成によって合成される有機物の量と呼吸により消費される有機物の量の差であると言えます。したがって、この値(植物の生産量、そして生育速度)は光照射有無の条件下で測定される二酸化炭素の濃度変化などから求められる光合成速度および呼吸速度に基づいて見積もることができます。過去の研究をたどると、外囲環境の酸素濃度を50%とか100%などと高めた条件下で光合成速度や呼吸速度が測定された例があります。これらの結果によると、酸素濃度を高めると光合成速度(物質生産)が低下するのが一般的であるようです。ただし、高酸素濃度条件下で長時間育てて、植物体や実の生産量な
どを解析した実験例を探し当てることはできませんでした。他方、水耕栽培などの際に水中に酸素を供給することが植物の生産量を高める場合があるのは一般に知られている事実のようです。
なお、高濃度の酸素の存在が光合成速度を低下させる原因の一つとして、二酸化炭素同化の初期段階で機能する酵素(ルビスコ(Rubisco)-ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase)の酸素に対する親和性(光呼吸活性)が考えられます(植物の営む光合成型の種類にもよりますが)。


佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-03-29
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