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園芸種の桜の増やし方について

質問者:   一般   yamazaru
登録番号4680   登録日:2020-04-03
日本中で見られるソメイヨシノは、接ぎ木で増やしたクローンということです。
園芸種のサクラは、ほとんどが挿し木や接ぎ木で増やすということですが、接ぎ木でつくられたものすべてがクローンということでしょうか。
ソメイヨシノはすべてクローンであり、そのために病虫害に弱いという欠点があります。
これからソメイヨシノに変わるといわれるジンダイアケボノもクローンになるのでしょうか。
Yamazaru 様

この質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。ご質問にはサクラについてお詳しい森林総合研究所の勝木博士から下記の回答文を頂戴しましたので、参考になさってください。

【勝木博士からの回答】
まず、言葉の定義ですが、植物分類学上の用語として、園芸種という概念は 現在では用いられていません。種(species)という単位は、原則的に自然界での野生状態の植物の分類に用いられる単位です。栽培植物の基本的な単位は、栽培品種(cultivar)です。

こうした栽培品種の増殖手法として、その植物の種類によって様々な手法が用いられますが、サクラの栽培品種の場合、多くは接木での増殖となります。その理由として、サクラは基本的に自家不和合性ですので、遺伝的に異なる個体と交配しないと子供を作れないからです。したがって、人間と同じように子供は母親と父親にそれぞれ似ていますが、異なる形態を持つことになります。花を観賞するような栽培品種の場合、花の色合いや大きさ、咲く時期といった観賞上重要な形質のわずかな違いが親と子とで異なり、同じ栽培品種として認められないからです。そこで、サクラの栽培品種では多くの場合、接木で増殖する単一クローンとなります。ただし、単純な形質の違いのみを栽培品種の特徴とする場合、実生から増殖する場合もあります。‘枝垂桜’は、枝垂れるという形質以外は野生のエドヒガンと違いはありませんし、枝垂れるという形質は遺伝するので、‘枝垂桜’の実生から‘枝垂桜’を増殖することもあります。

なお、‘染井吉野’は単一クローンの栽培品種ですが、「そのために病害虫に弱い」という指摘は正しくありません。‘染井吉野’は、多くのサクラの栽培品種よりも比較的病虫害に強いほうです。サクラ類てんぐ巣病という特定の病害に弱い、 もしくは大規模に‘染井吉野’だけを植栽すると病虫害が蔓延しやすい、という表現が適切です。

また、‘神代曙’も‘染井吉野’と同様に接木で増殖する単一クローンの栽培品種ですが、「これからソメイヨシノに変わる」か分かりません。‘染井吉野’も適切な管理をおこなえば全く問題なく利用できますので、今後も引き続き数多く利用されることが予想されます。また、全体に用いるサクラの多様化が進んでいますので、‘染井吉野’のように全国どこでも植えられる栽培品種は今後現れないように感じています。

最後にもう一つ、単純にカタカナ表記でソメイヨシノと書くと、栽培品種の意味も含まれますが、エドヒガン×オオシマザクラの種間雑種を示すこともあります。エドヒガン×オシマザクラの種間雑種の中には、栽培品種としてのクローンではない個体が数多く含まれることになります。学名で表記すると判りやすいのですが、種間雑種としてのソメイヨシノ(Cerasus ×yedoennsis)の中の一つが栽培品種としての‘染井吉野’(Cerasus ×yedoennsis 'Somei-yoshino')という関係になりますので、ご注意ください。


勝木 俊雄(森林総合研究所多摩科学園チーム長-サクラ保存担当-)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2020-04-08
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