一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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フデリンドウの開花条件

質問者:   一般   中山
登録番号4681   登録日:2020-04-03
家の近くにフデリンドウの群落があり、時間があれば観察に行ってます。
フデリンドウの開花が天候に関係ないように見え、また時間によって,閉花しているようです。

開花条件が日照時間、日射量、気温、天気等の要素が関係しているか知りたいのでよろしくお願いいたします。

場所は公園の一角でクスノキ,サクラ等が植えてあります。
数年前から500株強咲いてます。
中山 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。フデリンドウの開花に関する文献を探してみたのですが見当たりませんでしたので、リンドウを専門に研究されておられる西原昌宏先生に伺いました。西原先生から回答を頂きましたのでご覧下さい。


【西原先生の回答】
栽培リンドウ[エゾリンドウ(Gentiana triflora)やササリンドウ(G. scabra)]の場合ですが、気温が上がり、光があたる日中に開きます。昼間でも気温が低く、曇天になると閉じる性質があります。また雨天も閉じている傾向にあります。夕方から夜には気温が下がり、暗くなるので閉じています。ただし、個体差がみられます。このような開閉を1週間程度繰り返し、昆虫による受粉をしやすくしています。
つまり、御指摘いただいた条件はいずれも花の開閉に影響する要因と考えられます。これまでフデリンドウ(G. zollingeri )の花の開閉について科学的に詳しく調べられた例はないと思いますので、気象条件のうちどれが一番効果があるかは回答できません。
リンドウは一般的にはキクのように光周性は知られていませんので、質問者様の観察のように時間によって閉花しているのは興味深い現象だと思います。特定の時間帯でしょうか?群落において地域隔離が進み遺伝子レベルでの違いが生じている、あるいは種の違いによりフデリンドウが栽培リンドウと異なる花の開閉性質を持っていることも考えられますので、気温や天気、時間など記録してみるとよいと思います。
ちなみに、リンドウ花弁の開閉運動にはチューリップなどと同様、水輸送チャンネル―アクアポリンが関わっています。エゾリンドウよりササリンドウの方が開閉しやすいなどの違いも認められます。野生ではそれぞれのリンドウ種が最も生存に最も適した花の開閉運動を示すように生存戦略として進化してきたと考えられます。  


西原 昌宏(岩手生物工学研究センター)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2020-04-09