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セイタカアワダチソウのアレロパシーと自家中毒について

質問者:   会社員   テル
登録番号4688   登録日:2020-04-11
セイタカアワダチソウのアレロパシーと自家中毒についてお尋ねします。
自種の生存戦略において、化学物質を分泌する事で他種の生育を抑制阻害し、やがて群落を形成するという事は何となく理解できます。
ただ、その後化学物質の土中濃度がある一定量を超えると、自家中毒により自種の生育をも阻害し、多種が再び浸入し群落が小さくなってゆくという事実において、そのメカニズムは何となく理解できるのですが、その理由が今一つ理解できません。

私の疑問、仮説を以下に記します。

①自家中毒により群落が完全に消失する事もあるか?
②アレロパシーを主因とする他種の生育阻害と自種の群落形成は、あくまでも自種の定着が目的であって、排他的に大群落を形成するものではない。
⇒オギなど自種の好適とする生育環境が同一か似通っている既成群落に対して、その生存戦略の初期段階において、一過的に大群落を形成するが、単一種による群落形成は長期的に何かしらの不利益(連作障害のような?)があるため、自家中毒により群落規模の縮小を図っている。
③あるいは単に一過的な群落形成を局所的に発生させる事、その繰り返しにより生存戦略を図っている。

以上です。どうぞよろしくお願い致します。
テル 様

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。
質問を歓迎します。
セイタカアワダチソウは、道路、工場、住宅などの開発工事が盛んだった1960年代半ばから1990年代中頃には、花が黄色で草丈の高い集団が目立ち、日本の生態系に著しい影響を与えることが懸念されました。そのころは、勢力拡大は強力なアレロパシー物質の分泌による可能性、また、その後の衰退は自家中毒による可能性を考える人もいました。様々な視点から研究が行われ、アレロパシー物質なども見つかりましたが、現在では特に強力な効果を持つ物質ではないと評価されているようです。
詳しい回答を植物生態学が専門の久米篤博士(九州大学大学院農学研究院教授)にお願いしました。

【久米先生の回答】
アレロパシーは、植物が隣接して生育している競争者に負の影響を与える現象と定義されることもありますが、「化学物質を介した植物と植物の間の相互作用」というように、より広い化学的相互作用としてとらえられるようになっています。その理由は、化学物質による他感作用は特定の植物種だけにみられるものではなく、ほとんどの植物が、程度の差はあれ、何らかの相互作用をしていることが分ってきたからです。また、その効果が経年的に継続することは稀で、その植物の生育期間中に限られることが多いようです。アレロパシーによる自家中毒という話も、実験室レベルでは検出できますが、実際の野外ではその効果を検証することは、一般に難しい程度の影響がほとんどです。

セイタカアワダチソウは、風散布種子を持ち、風によって広範囲に運ばれ、日当たりの良い空き地でいち早く芽を出します。セイタカアワダチソウ群落の成立において、効率的な種子散布は非常に重要な要素です。典型的なパターンでは、空き地で最初に群落を作るのは1年生のブタクサやヒメムカシヨモギで、翌年以降に多年草であるセイタカアワダチソウが優占種となります。セイタカアワダチソウは密生し、根茎で広がるため、他の種の侵入や生長がしばらくの間は抑えられます。しかし、地表に広がるロゼット葉で冬越しするため、ススキなどが侵入し覆われるようになると、勢力が衰えてきます。これらの過程におけるアレロパシーの影響は副次的で、全体の力関係を少し変化させるという程度だと考えたほうが実態に合っていそうです。また、セイタカアワダチソウはリンやカリウムなどの必須栄養元素の要求性が高いため、貧栄養な環境での競争力は高くありません。

特に植物が生産する化学物質の影響については、実験室と実際の野外とではその効果や影響範囲が大きく異なることが多いです。

下記書籍には、作物も含めた様々な植物のアレロパシーがまとめられていますので、お勧めします:「植物たちの静かな戦い―化学物質があやつる生存競争」 (DOJIN選書71)  (2016)


久米 篤(九州大学大学院農学研究院)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2020-04-17
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