質問者:
会社員
ヨッシーサクラ
登録番号4695
登録日:2020-04-19
ソメイヨシノの父親は、オオシマザクラ、母親はエドヒガンと聞きますが、DNA解析でわかるのですか。それとも、実際に、エドヒガンの雌しべとオオシマザクラの花粉から栽培してみてわかるのですか。逆だと、別の品種になるのかしら?教えてください。
サクラの父親、母親
ヨッシーサクラ 様
このQ/Aコーナーをご利用くださりありがとうございます。ご質問には森林総合研究所多摩森林科学園の勝木俊雄博士から下記の回答文を頂戴しました。ご参考になさってください。
【勝木博士からの回答】
一般的に、植物は野生植物における種(species)を単位として分類されます。 ところが、栽培植物については、種を単位とした分類の他に、栽培品種 (cultivar)を単位として分類されることがあります。種は客観的な自然分類ですが、栽培品種は人の主観をもとにした人為分類ですので、本来は同列に扱ってはならないものです。この点に留意して、以下の回答をお読み下さい。
ご質問の件ですが、公園などでよく見られる‘染井吉野’は、この栽培品種にあたります。明治時代に名付けられたときは野生種の一つと考えられていましたが、よく調べてみると野生状態では分布していないことがわかりました。その後、形態の比較や交配実験などを通して、日本に自生している野生種のエドヒガンとオオシマザクラの雑種ではないかと考えられるようになったのです。ただし、この段階ではどちらが母親か父親かははっきりしませんでした。
1990年代になると、DNAを用いた分析がおこなわれるようになり、母親だけから遺伝する葉緑体とミトコンドリアのDNAを分析することで、母親がエドヒガンだと特定されました。なお、父親に関してはヤマザクラなどとの区別が難しく、DNA を用いてオオシマザクラだと特定されたのは2010年代に入ってからです。また、核のDNAを分析することで、全国に植栽されている‘染井吉野’が全て同じクローンであることも確認されました。この点で、‘染井吉野’は接ぎ木で増殖された栽培品種であることも明確に示されたのです。
なお、エドヒガンとオオシマザクラを交雑して得られる種間雑種は、種を単位とした分類ではソメイヨシノ(Cerasus ×yedoensis)とされます。しかし、栽培品種としての‘染井吉野’(Cerasus ×yedoensis 'Somei-yosino')そのものではありません。無数にある種間雑種としてのソメイヨシノの一つが、栽培品種としての‘染井吉野’なのです。こうした栽培品種の分類上の扱いについては、植物学者であっても正確に理解している人は少なく、誤解されていることもよくあります。
したがって、オオシマザクラを母親としたものや新たに交配したものは、種を単位とした分類からみると、全て種間雑種としてのソメイヨシノになります。しかし、栽培品種としての‘染井吉野’ではありません。
このQ/Aコーナーをご利用くださりありがとうございます。ご質問には森林総合研究所多摩森林科学園の勝木俊雄博士から下記の回答文を頂戴しました。ご参考になさってください。
【勝木博士からの回答】
一般的に、植物は野生植物における種(species)を単位として分類されます。 ところが、栽培植物については、種を単位とした分類の他に、栽培品種 (cultivar)を単位として分類されることがあります。種は客観的な自然分類ですが、栽培品種は人の主観をもとにした人為分類ですので、本来は同列に扱ってはならないものです。この点に留意して、以下の回答をお読み下さい。
ご質問の件ですが、公園などでよく見られる‘染井吉野’は、この栽培品種にあたります。明治時代に名付けられたときは野生種の一つと考えられていましたが、よく調べてみると野生状態では分布していないことがわかりました。その後、形態の比較や交配実験などを通して、日本に自生している野生種のエドヒガンとオオシマザクラの雑種ではないかと考えられるようになったのです。ただし、この段階ではどちらが母親か父親かははっきりしませんでした。
1990年代になると、DNAを用いた分析がおこなわれるようになり、母親だけから遺伝する葉緑体とミトコンドリアのDNAを分析することで、母親がエドヒガンだと特定されました。なお、父親に関してはヤマザクラなどとの区別が難しく、DNA を用いてオオシマザクラだと特定されたのは2010年代に入ってからです。また、核のDNAを分析することで、全国に植栽されている‘染井吉野’が全て同じクローンであることも確認されました。この点で、‘染井吉野’は接ぎ木で増殖された栽培品種であることも明確に示されたのです。
なお、エドヒガンとオオシマザクラを交雑して得られる種間雑種は、種を単位とした分類ではソメイヨシノ(Cerasus ×yedoensis)とされます。しかし、栽培品種としての‘染井吉野’(Cerasus ×yedoensis 'Somei-yosino')そのものではありません。無数にある種間雑種としてのソメイヨシノの一つが、栽培品種としての‘染井吉野’なのです。こうした栽培品種の分類上の扱いについては、植物学者であっても正確に理解している人は少なく、誤解されていることもよくあります。
したがって、オオシマザクラを母親としたものや新たに交配したものは、種を単位とした分類からみると、全て種間雑種としてのソメイヨシノになります。しかし、栽培品種としての‘染井吉野’ではありません。
勝木 俊雄(森林総合研究所多摩森林科学園チーム長-サクラ担当-)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2020-04-28
佐藤 公行
回答日:2020-04-28