質問者:
会社員
Ty
登録番号4705
登録日:2020-04-29
他のサイトで質問しているのですが、回答が出ないようなのでこちらで質問しています。4月の半ばから庭のヒイラギモクセイの新芽の先に葉が白くなったような花が3つほどつきました。通常のヒイラギモクセイの花とは全く違う形で花弁は6枚程度、メシベのようなものが3本確認できます。インターネットで検索したら、同様の現象が過去に2件ほどあったようですが、みな「不思議な花」として未解決のままです。3つの花は散り始めておりますが、新たに1つ花になりそうな状況です。みんなのひろば
ヒイラギモクセイの珍しい花
異常花ではとの指摘がありました。私は、遺伝的に表れた過去の花の形ではないかと勝手に思っています。
これは花なのか?花であれば、なんなのか?を知りたいと思います。よろしくお願いいたします。
他サイトでの質問(エバーグリーン:https://love-evergreen.com/qa/topic/13479)
Ty様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ヒイラギモクセイ(Osmanthus × fortunei)に異常花のようなものができたということですが、写真を拝見すると、正常な花が作られるべき場所に異常な花ができたということではなく、本来なら作られない場所に変わった花のようなものが作られたということですね。しかも、通常の花成の時期ではない時に。
異常花とか変わり花とか言われるものは本来の花の形状や模様、色などが変わったものが一般的ですが、写真のヒイラギモクセイの場合は、花はいずれも新梢の先についているようですね。ヒイラギモクセイもその親であるモクセイとヒイラギも、花は葉腋に束生しますから、この異常花は本来葉として形成されるはずだった新梢の茎頂の葉の原基が、新梢として成長の途中で花の器官になる遺伝子のスウィッチが間違ってオンになってしまったのでしょう。しかも正常の花冠の形成と違って不完全な形成過程でそうなったのかと思われます。
したがって、本来は4弁なのにそれより多い花弁様のものが出来たのでしょう。モクセイもヒイラギもヒイラギモクセイも雌雄異株でほとんどは雄株です。雄しべはいずれも2本です。写真を見る限り正常の花に近い花もできている様ですね。花期が正常でないということと、新梢の先端につく単花だということで、新梢の茎頂で異変が起きたと考えられます。
花はヒイラギモクセイに限らず、どんな植物でもいわゆる変わり花(異常花)がつくのは珍しいことではありませんが、このように新梢の茎頂が花器に変わるのは、珍しいかもしれません。
ご存知かと思いますが、花は葉が変わったものです。花弁も雄しべも雌しべも花芽に作り変えられる前はそれぞれ葉と同一なのです。植物体の茎頂に当たる部分(腋芽もそうですが)で元々葉となる原基が花成ホルモンの刺激で花の原基に切り替わるよう遺伝子のスイッチが入るのです。花の形成に関してはたくさんの研究が進んでおり、本コーナーでも多くの関聯する質問と回答が掲載されていますので、ぜひ読んでください。特に「ABCモデル」で検索して出てくる項目を参考にしてください。異常な花はこの花芽形成の時に異常が起きたためか、あるいは花成が進む途中で異常が起きるからだと思います。原因は色々あるようです。関係する遺伝子(複数あります)の自然突然変異、温度などの異常気象や病虫害、あるいは農薬などの化学物質による遺伝子発現過程への影響、内生の植物ホルモンへの影響などが関わっていると考えられます。あるいは、花や葉の色・模様、蕊の数などに局所的変異をもたらすトランスポゾン(動く遺伝子)が原因であるかもしれません。トランスポゾンについては、同項目で本コーナーを検索してください。
ヒイラギモクセイという特定の植物のこのような異常花の発現の仕組みについての研究は見つかりませんが、基本的なことは上述の原因が当てはまると思います。ヒイラギモクセイは名の通り、ヒイラギとギンモクセイの雑種だと言われていますので、当然両種の遺伝子が組み込まれているでしょう。ヒイラギモクセイの遺伝子解析が進めばこの植物のこのような異常花の出現の仕組みも分かるかもしれません。
それぞれ の植物(動物も同じですが)は長い進化の過程の中で、一度はまとまった遺伝子プログラムに起きる異変に対応して、現在のような多様な種類を生み出してきました。人類はこれらの植物の中で、さまざまな目的でヒトの生活に有用である変異を意図的に温存し、あるいは人為的に変化させて育てて(栽培して) きました。今日私たちを支えている植物は食用であろうと、観賞用であろうと すべてその延長上にあるものです。ヒイラギモクセイのこの異常花はどうなるか分かりませんが、こういう変わり種がさらに改良を加えられて、新しい品種として、園芸の世界に認められることも起きるかもしれませんね。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ヒイラギモクセイ(Osmanthus × fortunei)に異常花のようなものができたということですが、写真を拝見すると、正常な花が作られるべき場所に異常な花ができたということではなく、本来なら作られない場所に変わった花のようなものが作られたということですね。しかも、通常の花成の時期ではない時に。
異常花とか変わり花とか言われるものは本来の花の形状や模様、色などが変わったものが一般的ですが、写真のヒイラギモクセイの場合は、花はいずれも新梢の先についているようですね。ヒイラギモクセイもその親であるモクセイとヒイラギも、花は葉腋に束生しますから、この異常花は本来葉として形成されるはずだった新梢の茎頂の葉の原基が、新梢として成長の途中で花の器官になる遺伝子のスウィッチが間違ってオンになってしまったのでしょう。しかも正常の花冠の形成と違って不完全な形成過程でそうなったのかと思われます。
したがって、本来は4弁なのにそれより多い花弁様のものが出来たのでしょう。モクセイもヒイラギもヒイラギモクセイも雌雄異株でほとんどは雄株です。雄しべはいずれも2本です。写真を見る限り正常の花に近い花もできている様ですね。花期が正常でないということと、新梢の先端につく単花だということで、新梢の茎頂で異変が起きたと考えられます。
花はヒイラギモクセイに限らず、どんな植物でもいわゆる変わり花(異常花)がつくのは珍しいことではありませんが、このように新梢の茎頂が花器に変わるのは、珍しいかもしれません。
ご存知かと思いますが、花は葉が変わったものです。花弁も雄しべも雌しべも花芽に作り変えられる前はそれぞれ葉と同一なのです。植物体の茎頂に当たる部分(腋芽もそうですが)で元々葉となる原基が花成ホルモンの刺激で花の原基に切り替わるよう遺伝子のスイッチが入るのです。花の形成に関してはたくさんの研究が進んでおり、本コーナーでも多くの関聯する質問と回答が掲載されていますので、ぜひ読んでください。特に「ABCモデル」で検索して出てくる項目を参考にしてください。異常な花はこの花芽形成の時に異常が起きたためか、あるいは花成が進む途中で異常が起きるからだと思います。原因は色々あるようです。関係する遺伝子(複数あります)の自然突然変異、温度などの異常気象や病虫害、あるいは農薬などの化学物質による遺伝子発現過程への影響、内生の植物ホルモンへの影響などが関わっていると考えられます。あるいは、花や葉の色・模様、蕊の数などに局所的変異をもたらすトランスポゾン(動く遺伝子)が原因であるかもしれません。トランスポゾンについては、同項目で本コーナーを検索してください。
ヒイラギモクセイという特定の植物のこのような異常花の発現の仕組みについての研究は見つかりませんが、基本的なことは上述の原因が当てはまると思います。ヒイラギモクセイは名の通り、ヒイラギとギンモクセイの雑種だと言われていますので、当然両種の遺伝子が組み込まれているでしょう。ヒイラギモクセイの遺伝子解析が進めばこの植物のこのような異常花の出現の仕組みも分かるかもしれません。
それぞれ の植物(動物も同じですが)は長い進化の過程の中で、一度はまとまった遺伝子プログラムに起きる異変に対応して、現在のような多様な種類を生み出してきました。人類はこれらの植物の中で、さまざまな目的でヒトの生活に有用である変異を意図的に温存し、あるいは人為的に変化させて育てて(栽培して) きました。今日私たちを支えている植物は食用であろうと、観賞用であろうと すべてその延長上にあるものです。ヒイラギモクセイのこの異常花はどうなるか分かりませんが、こういう変わり種がさらに改良を加えられて、新しい品種として、園芸の世界に認められることも起きるかもしれませんね。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-05-03