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クチクラの由来

質問者:   大学生   クチクラ
登録番号4708   登録日:2020-04-29
植物生理学の授業で、クチクラは細胞壁(表皮)から分泌された物質からできていると聞きました。

クチクラに関して調べたところ、構成する物質はワックス(炭化水素)、クチン(ポリエステル)、多糖類だとわかりました。また、それら有機物が均一に混ざっているではなく,葉の表面からの深さによって構成物質が異なる、とも知りました。

そこで、クチクラが生成される過程をもっと知りたいと思いました。

具体的には、
1. 上記のクチクラを構成する有機物は、もともと細胞内にあるのでしょうか。それとも細胞壁で作られているのでしょうか。
2. どのようにして複数の有機物が層状になるのでしょうか。葉や果実が成長していくのに伴って、最表面の物質、二番目に表面に近い物質、三番目に表面に近い物質・・・と分泌されているのでしょうか。それとも物質の密度が関係しているのでしょうか。
3. これらの有機物は、問題なく細胞壁を通過できるのですか。

よろしくお願いします。
クチクラ さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問はクチクラについて研究をされている明治大学農学部の田中博和先生にお願いしました。

【田中先生の回答】
ご質問の内容は非常に興味深い問題だと思います。
ご指摘のように、クチクラはクチンやワックスのような脂肪酸派生物を主成分としています。これらの物質が、どこで作られて、最終的に葉の表面に作られるのかは不思議な問題ですね。

質問1に対する答えとしては、クチクラを構成する脂肪酸派生物は、もともとは細胞内にあると考えられています。
クチンやワックスの材料は、表皮細胞の内部で炭素長が短い脂質(C16, C18)として合成されると考えられています。クチンはそれらが重合(ポリエステル化)したものです。ワックスは炭素長が長い、超長鎖脂肪酸の派生物でできています。脂肪酸の伸長酵素は細胞内の小胞体に局在することがわかっています。つまり、クチクラの材料は細胞内で作られて、細胞外に移動すると考えられます。

質問2と3は、細胞内で作られた材料が、細胞外にどのように配置されるのか、という問題ですね。実は、この仕組みについてはまだよくわかっていませんが、いくつかヒントとなる研究結果がありますので、紹介します。
細胞の中から外にクチクラの材料が移動する過程には、細胞膜に分布する何種類かのABCトランスポーターが必要だということがわかっています。ABCトランスポーターの遺伝子が壊れた変異体では、クチクラが減少し、細胞内に脂質が蓄積してしまいます。つまり、細胞内で作られたクチクラの材料は、トランスポーターに依存して細胞の外に運ばれていると考えられます。
細胞壁を通過できるのか、ということに関しては、特にクチンは非常に分子サイズが大きいポリエステルなので、細胞壁中を移動するのは難しそうですね。トマトの研究では、クチンのポリエステル化に関わる酵素 (GDSLファミリータンパク質) が発見されています。興味深いことに、その酵素は細胞壁の最外部、つまりクチクラができる場所に分布することが示されています。このことから、細胞壁の中を移動したクチンの材料は、細胞壁の最外部で重合すると考えられます。

クチクラ形成には多数の酵素や制御因子が関わることがわかってきています。それらの因子の分布や、変異体におけるクチクラの構造を詳細に解析することで、クチクラの構造ができるためのより詳しいしくみが明らかになると期待されます。

クチクラを構成する複数の物質の層構造の研究については最近も新しい発見があるようです。次のリンクをご参照下さい。
https://tiisys.com/blog/2019/0...



田中 博和(明治大学農学部 生命科学科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2020-05-06
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