質問者:
高校生
エノコロ
登録番号4711
登録日:2020-05-03
ビオラを家で育てているのですが、もともと買った色から徐々に変化していることに気づきました。みんなのひろば
ビオラの花の色の変化
なぜ変化するのかと不思議に思い、図鑑やインターネット等で調べてみると、気温によって変化するということがわかりました。
しかし、なぜ気温によって花の色が変化するのかという疑問がのこりました。
色素の性質によって花の色も変化しているのでしょうか?
回答よろしくお願いします。
エノコロ さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
植物の色素は葉緑素(クロロフィル)、アントシアニン、フラボノイド、カロテン、ベタレインなどに大別されますが、多くの花の色はアントシアニン、フラボノイド、カロテンなどがいろいろな割合で混ざったものであるばかりでなく、例えばアントシアニンに無色のフェノール系物質が助色団として結合したり、金属イオンが結合したりしていろいろな色調を出しています。そしてこれら色素を構成する成分類の生合成に関与する酵素類の遺伝子発現が多様な環境条件によって変化しています。さらに、ビオラやパンジーなど園芸品種の花色はさまざまな系統の組み合わせで育種され特徴あるものが選別されてきたものです。
ご質問は、アントシアニン合成、その遺伝子発現の制御をご専門の信州大学 久保浩義先生に回答をお願いしました。
【久保先生の解説】
花の色の変化の原因はいろいろ考えられます。ご質問の内容からは色の変化の様子はわかりませんが、単純に色素量が変化しただけでも色が変わって見えます。たとえば、ビオラに含まれている紫色のアントシアニンは非常に濃度が濃いと黒っぽく見えますが、濃度が減少するに従い紫色から赤紫色に見えてきます。さらに、花弁にはカロチノイドと呼ばれる黄色い色素も含まれている場合がありますが、カロチノイドの量はアントシアニンほど温度変化に影響を受けないので、カロチノイドの黄色とアントシアニンの紫色の割合が変わることでさらに異なった色調になるかもしれません。
アントシアニンの蓄積量に影響を与える要因は、温度、光、栄養条件など様々ありますが、ここでは温度に焦点を絞って述べます。秋の紅葉もそうですが、アントシアニンが低温条件下で蓄積することが多くの植物で知られています。低温条件下ではアントシアニン生合成系の多くの遺伝子の発現が増加します。また、それらの遺伝子の発現を調節しているMYB、bHLHといった調節遺伝子の発現も低温で誘導されることが報告されています(Zhang et al. 2011)。すなわち植物は低温を感受して積極的にアントシアニンを合成していると考えられます。また、高温条件では合成系遺伝子の発現が減少する例が報告されています(Dela et al. 2002)。一方、アントシアニンの分解が高温で誘導される可能性も考えられます。高温条件でアントシアニンを分解するペルオキシダーゼの発現が増加する例が知られています(Movahed et al. 2016)。早春の寒い時期にはアントシアニンが多量に蓄積していたのが、暖かい日が続く様になってアントシアニン量が減少したため色が変わって見えたのかもしれません。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
植物の色素は葉緑素(クロロフィル)、アントシアニン、フラボノイド、カロテン、ベタレインなどに大別されますが、多くの花の色はアントシアニン、フラボノイド、カロテンなどがいろいろな割合で混ざったものであるばかりでなく、例えばアントシアニンに無色のフェノール系物質が助色団として結合したり、金属イオンが結合したりしていろいろな色調を出しています。そしてこれら色素を構成する成分類の生合成に関与する酵素類の遺伝子発現が多様な環境条件によって変化しています。さらに、ビオラやパンジーなど園芸品種の花色はさまざまな系統の組み合わせで育種され特徴あるものが選別されてきたものです。
ご質問は、アントシアニン合成、その遺伝子発現の制御をご専門の信州大学 久保浩義先生に回答をお願いしました。
【久保先生の解説】
花の色の変化の原因はいろいろ考えられます。ご質問の内容からは色の変化の様子はわかりませんが、単純に色素量が変化しただけでも色が変わって見えます。たとえば、ビオラに含まれている紫色のアントシアニンは非常に濃度が濃いと黒っぽく見えますが、濃度が減少するに従い紫色から赤紫色に見えてきます。さらに、花弁にはカロチノイドと呼ばれる黄色い色素も含まれている場合がありますが、カロチノイドの量はアントシアニンほど温度変化に影響を受けないので、カロチノイドの黄色とアントシアニンの紫色の割合が変わることでさらに異なった色調になるかもしれません。
アントシアニンの蓄積量に影響を与える要因は、温度、光、栄養条件など様々ありますが、ここでは温度に焦点を絞って述べます。秋の紅葉もそうですが、アントシアニンが低温条件下で蓄積することが多くの植物で知られています。低温条件下ではアントシアニン生合成系の多くの遺伝子の発現が増加します。また、それらの遺伝子の発現を調節しているMYB、bHLHといった調節遺伝子の発現も低温で誘導されることが報告されています(Zhang et al. 2011)。すなわち植物は低温を感受して積極的にアントシアニンを合成していると考えられます。また、高温条件では合成系遺伝子の発現が減少する例が報告されています(Dela et al. 2002)。一方、アントシアニンの分解が高温で誘導される可能性も考えられます。高温条件でアントシアニンを分解するペルオキシダーゼの発現が増加する例が知られています(Movahed et al. 2016)。早春の寒い時期にはアントシアニンが多量に蓄積していたのが、暖かい日が続く様になってアントシアニン量が減少したため色が変わって見えたのかもしれません。
久保 浩義(信州大学理学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2020-05-20
今関 英雅
回答日:2020-05-20