一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ブルームの必要性

質問者:   大学生   冷凍うどん
登録番号4714   登録日:2020-05-04
野菜ソムリエの資格をとるにあたり、「ブルームレスきゅうり」という言葉を初めて知りました。

ブルームについて気になったのでいろいろ調べてみました。ブルームは自身の水分蒸発を防ぐ役割があるため、ブルームキュウリは、ブルームレスキュウリよりもみずみずしくシャキシャキしている、と。

そこでふと疑問に思ったのですが、そもそも実の表面にはクチクラ層で覆われているから、水分蒸発を防ぐ、という役割はクチクラ層だけで十分ではないでしょうか。
冷凍うどん 様

 植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

 植物体の表面はクチクラという層に覆われています。クチクラは、クチンという不飽和度のかなり高い脂肪酸の重合した物質の間を蠟(高級脂肪酸と高級アルコールのエステル)が埋めているという構造をしています。微生物などの侵入を防いだり、水の蒸発、浸入を防いだりする働きがあります。キウリやブドウなどの果皮の表面に見られるブルームは、内部から押し出された蠟が1~10nmの棒状の突起をつくり、クチクラの最外層を覆っているものです。どちらもの層も疎水性の高い物質からできていますから、二重に疎水性の層がある方が蒸発を防ぐ効果は大きいと考えられます。
 ブルームのないクチクラ層だけで十分ではないかという質問ですが、クチクラ層が完全に水分の蒸発を抑えることはありません。例えば、カバノキ科の植物の葉を用いた実験では、水の蒸散は主として気孔で起きますが、気孔が完全に閉じている場合でも、気孔が開いている場合の約10%くらいの蒸散がおこります。この蒸散はクチクラからの蒸散と考えられ、クチクラ蒸散と呼ばれています。クチクラ蒸散はいろいろな植物で知られています。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-05-11
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