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CAM植物の成長促進方法について

質問者:   一般   CAM太郎
登録番号4719   登録日:2020-05-08
現在CAM植物(ドルステニア ギガスなど)を植物育成ライトで育てることはできないか調べています。実際に育成ライトで育成中でもあります。(育成ライトはPPFD 550μmol/m2/sのモノを使用しています。)
そこで、CAM植物の光合成について調べていて疑問があり質問させて頂きました。
下記の論文を読み疑問に思った点を質問します。
・CAM型植物であるファレノプシスのCO2吸収の様相
http://www5b.biglobe.ne.jp/~i5...


【質問】
フェイズ4の光合成とフェイズ3の光合成の効率はどちらの方が高いのか?

フェイズ4の方が効率がよいのであれば光を当てる時間を長くした方がよく成長するでは?と考えたのですが、
光を当てる時間を長くすると夜の時間が短くなりフェイズ1でのCO2吸収量に影響が出てしまうのでどちらを優先した方がより良いのかを確認したかったため質問しました。

この論文はファレノプシスを題材にしているので、ドルステニアとは違うかもしれませんが、他に参考になる論文を見つけることができなかったのでこの論文を参考にしました。
CAM太郎さん

CAM植物については多くの解説がありますが、日本語のものでは「日本光合成学会」がWeb上で公開している「光合成事典」(web版)がおすすめです(無料で利用可)。このサイトで「CAM」で検索し、その中の「ベンケイソウ型有機酸代謝(CAM)」を見てください。
CAM太郎さんが質問に書いたCAM型光合成をI-IV期に分けるやり方はC.B. Osmond博士による用語を踏襲したものです(以下、このサイトの図に従い説明します)。

「説明」
 ベンケイソウ型植物の光合成の日周的変動は、乾燥地に生育する植物の適応進化型対応だと説明されます。光合成には空気中のCO2を取り入れる必要がある。そのためには気孔を開く必要があるが、それに伴い植物体から蒸散によって水分が失われる。水分の損失は、植物の枯れ死に直結する。他方、植物の成長には光合成が必要である。そこで、乾燥地に生きる植物は、この難題を解決するために、CAM型光合成方式を進化の過程で獲得しました。

以下の説明で、IーIV期はOsmondによる分類で、上記解説の図に従います。

*I期(夜):気温が下がり相対湿度が高い時間帯(夜)に気孔を開き、水分の損失を抑えつつ、CO2を取り入れる。取り込んだCO2はホスホエノールピルビン酸と反応してオキサロ酢酸に変換され、後者は有機物の分解によって生じるNADHによってリンゴ酸に還元されて、液胞に蓄えられる。

*II期(朝):相対湿度もまだそれ程低くない朝は、気孔は依然として開いており、CO2を取り込むと共に、リンゴ酸の分解により生じたCO2も消費して、光合成により有機物を合成する。

*III期(午前中―午後半ば):気温が上がり、相対湿度が低くなると水分の損失が大きくなる。そこで、気孔を完全に閉じて水の損失を防ぎ、リンゴ酸の分解によって生じるCO2を利用して光合成(糖類の合成など)が続くが、リンゴ酸が利用され尽くすと、光合成も止む。

*IV期(午後遅くから夜間):気温が下がり、相対湿度が上がると徐々に気孔を開いてリンゴ酸を蓄積し、I期につながる。

 CAM型光合成をする植物は、ベンケイソウ科(Crassulacea)に属する植物だけでなく、かなり広い植物群に分布します。植物は、乾燥に対する適応戦略として様々な方式を独立に発達させたが、示し合わせたわけではないのに、回答は似通ったものだったといえましょう。

さて、下記の質問について説明します:「フェイズ4の光合成とフェイズ3の光合成の効率はどちらの方が高いのか?」

光合成の効率を、「生物による光エネルギーの有機物の化学エネルギーへの変換」とらえれば、最も重要なのはIII期です。しかし、それには有機物の素材となるCO2が必要で、水分の喪失を防ぎつつ有機酸を蓄積するI期がなければIII期も起こらないことになります。なお、系統上はCAM型植物に分類されている植物でも、水分条件によっては光合成がC3型になるという例も知られています。また、酸代謝を中心とする日周的変化は、植物の概日リズム(サーカディアンリズム)の影響も受けており、人工光栽培によりリズムが攪乱される影響も考えられます。ファレノプシスの生育に対する人工光の影響に関しては、こうした様々な点も考慮する必要があり、質問者からの条件だけでは、結果の予測は困難だと思います。

櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-05-11
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