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雑草と野菜の違いは?

質問者:   高校生   桑原
登録番号4723   登録日:2020-05-10
野菜は世話をしないと枯れてしまうのに雑草は放っておいてもアスファルトの間からでも生えてくることに疑問を持ちました。
雑草と野菜の栄養源や構造上の違いはあるのでしょうか?
また、雑草の生命力の高さを遺伝子操作や品種改良などを通じて野菜の生産量向上に活かすことはできないのでしょうか?
桑原 様

この質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。ご質問には岡山大学の坂本 亘先生から下記のような回答文を頂戴しました。参考になさってください。

【坂本 亘先生からの回答】
桑原さんの質問を聞いて、元巨人軍の上原投手が使って流行語になった「雑草魂」を思い出しました。調べてみたらもう20年以上前の話のようですね。雑草というと強いイメージで、確かに、それはアスファルトのように厳しい環境で育っているからですが、雑草がなぜ強いかを説明するのは難しいです。でも逆に、作物がなぜ弱いか、というのは「Domestication」という現象で一般化できます。

Domesticationは「栽培化」と訳しますが、動物だったら「家畜化」といいます。オオカミとイヌの関係を考えれば、わかりやすいかもしれません。現在私たちが食べているイネやムギなどは、約1万年前に栽培化されて人類が農耕するようになったと言われています。栽培化は人間がよりよいものをものすごい長い時間をかけて食べる植物を「選抜」してきた結果です。ちなみに、作物の多くはイネ科、マメ科、バラ科、ナス科に属します。これらの人間に好んで選ばれた作物から、もともとの野生種が自然に突然変異を起こしたり、純系どうしが混ざり合って新しいものが作られますが、遺伝子によって決まることがわかったのは、約120年前のことです。現在では遺伝子がDNAであることがわかり、遺伝子操作で品種改良も可能になりつつあります。人類は、9900年以上も遺伝子を知ることなく栽培化行ってきましたが、この100年程度で爆発的に育種が進んだと言えます。

このような過程で、栽培化に寄与した遺伝子(栽培化遺伝子)が野生種との比較で明らかになってきています。例えば、イネでは「脱粒性」といって、野生種では種が穂から自然に落ちて拡散して子孫を増やすしくみを栽培種は失い、人間が収穫してくれないと種を増やせなくなってしまいました。また、栽培するためには、種が一斉に発芽しなければならず、野生種のように環境に応じて発芽する習性(休眠性)も失ってしまいました。その結果、ダーウィンの適応進化とは異なる方向に栽培化して作物ができあがったので、弱くなっています。

桑原さんの書いている「雑草の生命力」を解明する研究も行われつつありますが、遺伝子の解析はまだまだこれからです。でも、作物の「野生種の多様性」を使った研究はたくさん行われていて、例えば、病害抵抗性遺伝子の多くは、野生種から作物に導入されています。これは私の持論でもありますが、一見、役に立たないことがいつかは世の中のためになるので、「雑草の研究」はこれからどんどん進むのではないかと思います。

桑原さんは高校生ということで、新型コロナウイルスによる学校の休校で大変かもしれませんが、どうぞ気をつけて過ごしてください。




坂本 亘(岡山大学資源植物科学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2020-05-13
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