一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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棕櫚の根っこ

質問者:   その他   しげき
登録番号4724   登録日:2020-05-10
2~3年前に、棕櫚(直径約15cm)を根元から植木屋さんに切断してもらいました。最近残っている切り株
(地表15cm位)が邪魔になりますので、ノミで砕いて取り去る作業をしました。
そのときに、多分棕櫚の根の末端だと思うのですが、切り株から50cmほど離れた地上に出ている部分(これもハサミで切断済み・直径約2cm)の先から水分が沁みだしてきました。
また、ノミをハンマーで叩いているとき、「シュワー」というような、微かな音が聞こえました。
切り株を砕く作業と、水が出てくること、また「音」とは
関係があるのでしょうか?
写真撮影しましたので、必要でしたらメール送信させていただきます。
しげきさん

みんなの広場「植物Q&A」へようこそ。
質問を歓迎します。
送られた写真を転送し、回答を植物生態学が専門の中坪孝之博士(広島大学統合生命科学研究科教授)にお願いしました。

【中坪先生の回答】
 シュロ(棕櫚)は日本、中国に分布するヤシ科の植物で、日本の自生地は九州南部ですが、寒さには強く、関東地方でも屋外で冬を越し、場所によっては野生化もしています。南国的な樹形に惹かれて植えたものの、大きく育ちすぎて仕方なく伐採したというケースは多いようです。

 植物の根は、葉で作られた光合成産物を受け取って生命活動を維持していますが、地上部が切り倒されても、しばらくの間は生きています。植物の種類によっては、根や切り株から地上部が再生しますが、それが起こらない植物では、やがて根は枯死し、土壌中の微生物の働きによって分解されていきます。死んだ植物体の分解は一様に進むのではなく、成分などの違いによって分解されやすい部分と分解されにくい部分があり、リグニンなどを多く含む組織は完全に分解されるのに長い時間がかります。このため、分解途上では、外見は根の形を保っていても、中は分解されてスカスカになっているということが起こりえます。

 ご質問のケースでは、伐採して2~3年経っているとのことですので、根はすでに枯れ、分解の途上だったと推測されます。写真を見ると、根の形ははっきり認められますが、おそらく中は分解が進み、部分的にスポンジ状あるいはパイプ状になって水を含みやすくなっていたことが想像されます。その段階でノミを入れたため、圧がかかって水とともに空気が押し出されたために、音が出たことが考えられます。

現物を調べたわけではないので、断定はできないのですが、状況から考えて、このような説明がもっとも可能性が高いと思われます。


A・・・切り株; B・・・根の先端?
(しげきさんより)

A・・・切り株; B・・・根の先端?
(しげきさんより)

C・・・Bの拡大写真(先端が水分で変色しています)
(しげきさんより)

C・・・Bの拡大写真(先端が水分で変色しています)
(しげきさんより)

中坪 孝之(広島大学統合生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2020-05-15
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