質問者:
大学生
くろ
登録番号4728
登録日:2020-05-14
雑誌でイチゴの垂直栽培という方法を見つけました。酸化エチレンとは
本来は切るはずのランナーを垂直に立てて誘引すると、植物ホルモンが活発に生成され植物本来の力を引き出し結果的に生育がよくなるという方法でした。
解説の中に、エチレンは植物体内で殺菌力の強い酸化エチレンに変化し病気に強くなると書いてありました。
これについてもう少し詳しく知りたいと思い、酸化エチレンについて調べてみたのですがよく分かりませんでした。
エチレンが増えることでほんとうに病気に強くなるのか、どれぐらいの効果があるのかについて知りたいです。
よろしくお願いします。
くろ さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
イチゴの垂直栽培はストレスを与えることで増加するエチレンの生理作用を利用する手法ですね。ところで、植物組織がエチレンを代謝して二酸化炭素やエチレングリコールを生成することはエンドウやソラマメの幼植物、その他で証明されていますが、エチレンオキサイド(酸化エチレン)を生成することは証明されていません。エチレングリコールまで酸化される仮説上の過程の中で、エチレンが酸化されたエチレンオキサイドが銅イオンを含む仮説上の活性サイトに結合してさらにエチレングリコールになる、と推定する報告があるのみです。しかし、エンドウ芽生えから抽出した粗酵素液にエチレンを与えると、粗酵素液に含まれているモノオキシダーゼによってエチレンオキサイドが生成されるとの報告はありますが、生きた植物組織で生成されたエチレンがエチレンオキサイド(遊離した)を生成するとの実証はありません。
酸化エチレンは強い毒性をもつ物質で、実際に加熱滅菌できない材質の滅菌に酸化エチレンを使用しています。例えば医療用のプラスティック注射筒、組織培養用のプラスティックのペトリ皿や精密デザインの手術用具などはみなエチレンオキサイドで滅菌されています。その際にはかなり高濃度のエチレンオキサイドガスを使用しているようです。果実などで生物学的にはかなり高濃度のエチレンを生成するといってもせいぜい100~300ppmの濃度です。仮にそれがエチレンオキサイドに酸化されたとしてもこれが病原菌の感染を阻害するほどの濃度となるかどうかは怪しいものです。「エチレンは植物体内で殺菌力の強い酸化エチレンに変化し病気に強くなる」との記載の根拠は知りません。エチレンを盛んに生成する熟期にある果実や、ストレスを与えてエチレン生成を促進した植物が「病気に強くなる」とする科学的報告も見つかりませんでした。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
イチゴの垂直栽培はストレスを与えることで増加するエチレンの生理作用を利用する手法ですね。ところで、植物組織がエチレンを代謝して二酸化炭素やエチレングリコールを生成することはエンドウやソラマメの幼植物、その他で証明されていますが、エチレンオキサイド(酸化エチレン)を生成することは証明されていません。エチレングリコールまで酸化される仮説上の過程の中で、エチレンが酸化されたエチレンオキサイドが銅イオンを含む仮説上の活性サイトに結合してさらにエチレングリコールになる、と推定する報告があるのみです。しかし、エンドウ芽生えから抽出した粗酵素液にエチレンを与えると、粗酵素液に含まれているモノオキシダーゼによってエチレンオキサイドが生成されるとの報告はありますが、生きた植物組織で生成されたエチレンがエチレンオキサイド(遊離した)を生成するとの実証はありません。
酸化エチレンは強い毒性をもつ物質で、実際に加熱滅菌できない材質の滅菌に酸化エチレンを使用しています。例えば医療用のプラスティック注射筒、組織培養用のプラスティックのペトリ皿や精密デザインの手術用具などはみなエチレンオキサイドで滅菌されています。その際にはかなり高濃度のエチレンオキサイドガスを使用しているようです。果実などで生物学的にはかなり高濃度のエチレンを生成するといってもせいぜい100~300ppmの濃度です。仮にそれがエチレンオキサイドに酸化されたとしてもこれが病原菌の感染を阻害するほどの濃度となるかどうかは怪しいものです。「エチレンは植物体内で殺菌力の強い酸化エチレンに変化し病気に強くなる」との記載の根拠は知りません。エチレンを盛んに生成する熟期にある果実や、ストレスを与えてエチレン生成を促進した植物が「病気に強くなる」とする科学的報告も見つかりませんでした。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-05-20