質問者:
高校生
植物色
登録番号4744
登録日:2020-05-30
学校の教科書に「芋虫からの食害を受けた植物は、その芋虫にとって天敵である"寄生バチ"を、特殊な化学物質を生成する事でおびき寄せ、芋虫Aを退治してもらっている。」と書いてありました。これは事実でしょうか?みんなのひろば
寄生バチを呼ぶ植物について
またこの事で追加質問します。
1)「芋虫Aから食害を受けた植物aは、自身から揮発性物質(パターンA)を生成し、その芋虫Aの天敵である寄生バチAをおびき寄せる。また、芋虫Bから食害を受けた植物aは、自身から揮発性物質(パターンB)を生成し、その芋虫Bの天敵である寄生バチBをおびき寄せる。」とも書いてありましたが、これは事実でしょうか?
*「」内で登場する芋虫Aと芋虫Bは違う種類の生物です。寄生バチAとBも同様です。
2)1)では植物が、食害を行う芋虫の種類によって、揮発性物質の生成パターンを分けていました。しかしなぜ植物は、食害を行う芋虫の種類を判別できるのでしょうか?感覚があるのでしょうか?
植物色君
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。この問題に関係する研究を進めておられる京都大学大学院農学研究科/応用生命科学専攻応用生化学講座の森直樹教授に回答をしていただきました。
以下を御覧ください。このように生物の間で化学物質を仲立ちとしてコミュニケーションが行なわれている現象を研究する分野は一般に化学生態学と呼ばれています。もし、関心がありましたら、本もたくさん出ていますので読んでみてください。ネットで検索しても他の多くの情報が得られます。
【森先生の回答】
学校の教科書に「芋虫からの食害を受けた植物は、その芋虫にとって天敵である"寄生バチ"を、特殊な化学物質を生成する事でおびき寄せ、芋虫Aを退治してもらっている。」と書いてありました。これは事実でしょうか?
個人的な話で申し訳ないのですが、ご質問の内容は、私の米国留学中に研究室の同僚が行った研究です。懐かしい思い出です。芋虫に食害された植物は、良い香りを放出します。あなたも、きっと驚くと思います。
質問に答えます。「植物が寄生バチをおびき寄せる」と書かれていましたが、より科学的な表現をするならば「寄生バチが植物が放出する匂いを学習して、芋虫を発見する」となります。寄生バチの匂いに対する学習能力は極めて高いことがわかってきました。
この学習能力を利用して、私たちは麻薬犬や地雷犬ならぬ、麻薬ハチや地雷ハチを利用する可能性を探っていました。
またこの事で追加質問します。
1)「芋虫Aから食害を受けた植物aは、自身から揮発性物質(パターンA)を生成し、その芋虫Aの天敵である寄生バチAをおびき寄せる。また、芋虫Bから食害を受けた植物aは、自身から揮発性物質(パターンB)を生成し、その芋虫Bの天敵である寄生バチBをおびき寄せる。」とも書いてありましたが、これは事実でしょうか?
*「」内で登場する芋虫Aと芋虫Bは違う種類の生物です。寄生バチAとBも同様です。
事実です。植物aは芋虫Aと芋虫Bに加害された場合に、わずかながら揮発成分の組成が異なる香りを放出します。寄生バチBは、恐らく学習効果により、芋虫Bに食害されたときに放出される揮発性物質の組成(パターンB)を識別していると我々は考えました。
2)1)では植物が、食害を行う芋虫の種類によって、揮発性物質の生成パターンを分けていました。しかしなぜ植物は、食害を行う芋虫の種類を判別できるのでしょうか?感覚があるのでしょうか?
この質問は、素晴らしいです。実は、芋虫の唾液にはある化合物(エリシター)が含まれており、食害時に植物が昆虫のエリシターを受容体で検出します。このエリシターの組成が芋虫AとBで異なっており、芋虫が異なれば、植物が異なる組成の揮発成分を放出すると考えています。
私は、この芋虫の唾液成分について化学的な研究を進めていました。「芋虫に食害された植物が良い香りを放出する」現象を見つけた鋭い観察眼、およびこの現象から芋虫の唾液成分に注目した洞察力には、私も関係者の一人として大きく刺激を受けました。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。この問題に関係する研究を進めておられる京都大学大学院農学研究科/応用生命科学専攻応用生化学講座の森直樹教授に回答をしていただきました。
以下を御覧ください。このように生物の間で化学物質を仲立ちとしてコミュニケーションが行なわれている現象を研究する分野は一般に化学生態学と呼ばれています。もし、関心がありましたら、本もたくさん出ていますので読んでみてください。ネットで検索しても他の多くの情報が得られます。
【森先生の回答】
学校の教科書に「芋虫からの食害を受けた植物は、その芋虫にとって天敵である"寄生バチ"を、特殊な化学物質を生成する事でおびき寄せ、芋虫Aを退治してもらっている。」と書いてありました。これは事実でしょうか?
個人的な話で申し訳ないのですが、ご質問の内容は、私の米国留学中に研究室の同僚が行った研究です。懐かしい思い出です。芋虫に食害された植物は、良い香りを放出します。あなたも、きっと驚くと思います。
質問に答えます。「植物が寄生バチをおびき寄せる」と書かれていましたが、より科学的な表現をするならば「寄生バチが植物が放出する匂いを学習して、芋虫を発見する」となります。寄生バチの匂いに対する学習能力は極めて高いことがわかってきました。
この学習能力を利用して、私たちは麻薬犬や地雷犬ならぬ、麻薬ハチや地雷ハチを利用する可能性を探っていました。
またこの事で追加質問します。
1)「芋虫Aから食害を受けた植物aは、自身から揮発性物質(パターンA)を生成し、その芋虫Aの天敵である寄生バチAをおびき寄せる。また、芋虫Bから食害を受けた植物aは、自身から揮発性物質(パターンB)を生成し、その芋虫Bの天敵である寄生バチBをおびき寄せる。」とも書いてありましたが、これは事実でしょうか?
*「」内で登場する芋虫Aと芋虫Bは違う種類の生物です。寄生バチAとBも同様です。
事実です。植物aは芋虫Aと芋虫Bに加害された場合に、わずかながら揮発成分の組成が異なる香りを放出します。寄生バチBは、恐らく学習効果により、芋虫Bに食害されたときに放出される揮発性物質の組成(パターンB)を識別していると我々は考えました。
2)1)では植物が、食害を行う芋虫の種類によって、揮発性物質の生成パターンを分けていました。しかしなぜ植物は、食害を行う芋虫の種類を判別できるのでしょうか?感覚があるのでしょうか?
この質問は、素晴らしいです。実は、芋虫の唾液にはある化合物(エリシター)が含まれており、食害時に植物が昆虫のエリシターを受容体で検出します。このエリシターの組成が芋虫AとBで異なっており、芋虫が異なれば、植物が異なる組成の揮発成分を放出すると考えています。
私は、この芋虫の唾液成分について化学的な研究を進めていました。「芋虫に食害された植物が良い香りを放出する」現象を見つけた鋭い観察眼、およびこの現象から芋虫の唾液成分に注目した洞察力には、私も関係者の一人として大きく刺激を受けました。
森 直樹(京都大学大学院農学研究科/応用生命科学専攻応用生化学講座)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2020-06-05
勝見 允行
回答日:2020-06-05