質問者:
自営業
しゃちねこ
登録番号4746
登録日:2020-05-31
バラは古くは万葉集の歌に詠まれ「ウマラ(嫵・曼・孌)」と言い、いずれも(美しい)という意味の漢字と「ウマラ(武・蛮・刺)」(荒々しい、猛々しい、刺のある)という意味の漢字の掛詞で構成されみんなのひろば
バラ科の分類について
「美しい花の咲く、荒々しい刺のある(木)」と言う意味です。
バラは「バン・ラン(棒・孌)」良い、美しい「バン・ラ(棒・刺)」堅い、刺のあるという漢字の掛詞で構成され
「美しい花の咲く、堅い刺のある(木)」と言う意味です。
したがって
語源上の意味においては、美しい、トゲのある木を「バラ」と呼び、トゲのないものは「バラ」とは本来ならば言えません。
トゲがないにも関わらず
桜、梅、苺、杏、などの草木がバラ科に属するのは
植物学的にはどのような見地から分類されたものでしょうか。
なお、モッコウバラは
「猛刺公無」(荒々しいトゲが公然とは無い)バラの意味であり語源です。
ーー
日本の語源名と植物実態が乖離していくことを防ぎたいと思いながらも、どこへ相談するのがふさわしいのか分からず、こちらへこのような質問をお送りすることをご容赦ください。
しゃちねこ様
植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。植物名の語源がとても詳しく書かれており、感心いたしました。
生物の進化の道筋(系統)を解析し、系統間の関係に基づく分類体系を系統分類と言います。遺伝子など、生物の特徴の情報は、DNAを構成する4つの塩基の配列として書き込まれていますが、近年、塩基配列の解析技術が飛躍的に進歩したこともあって、各生物のDNAの塩基配列を直接比較することができるようになりました。そのような技術的な進歩もあって、1990年以降は、各生物の塩基配列の異同から系統間の関係をより客観的に、信頼性高く推定できる分子系統分類体系(APG分類体系)が主流になっています。
それ以前は、外部形態の比較による手法がとられていましたが、代表的な分類体系としては、ドイツのエングラーとアメリカのクロンキストによるものがあります。エングラーの分類体系は1900年ごろ発表され、その後改訂を加えられたものですが、種子植物を先ず、胚珠が裸出している裸子植物と、子房によって包まれている被子植物に分けます。被子植物は発芽種子の子葉が1枚か、2枚かによって単子葉類と双子葉類に分けます。さらに双子葉類は花弁の基部が離れているか、くっついているかによって離弁花植物と合弁花植物に分けました。さらに花の構造などをもとに、いろいろな科に分類していきました。牧野日本植物図鑑はエングラーの分類体系に基づいて作られており、もっともなじみ深いものです。クロンキストの分類体系は1980年代に提唱された新しい体系です。モクレンなど雌しべや雄しべがが多数、らせん状に配列している花がもとになって、いろいろな構造をもつ花が進化したと考えて作られた体系です。朝日新聞社から出版された145分冊からなる百科シリーズ「植物の世界」は、クロンキストの分類体系に準じています。花の構造が、系統を反映することが多く、生育環境によって影響を受けにくいことなどから、どちらの分類体系でも主要な分類基準として用いられています。
バラ科全体の共通した特徴としては、花は両性で放射相称、がく裂片と花弁が各5枚、雄しべは多数、多くは雌しべも多数、という点があげられます。また、花弁が花の他の器官に比べ目立ち、萼片の基部が筒状になるという点も共通しています。バラ科は花の特徴が共通するものを集めたグループと言えます(植物の世界、5-66)。バラ科植物の範囲はAPG分類体系の結果とも一致しています。
すなわち、バラ科の植物は花の構造が上記のように共通している植物群を指します。ノイバラやセイヨウバラのようにとげがあるかどうかは関係ありません。なお、バラ科のバラは、国際的に共通であるRosaceaeという科名に対応する和名として日本植物分類学会が選定したものが用いられています。
植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。植物名の語源がとても詳しく書かれており、感心いたしました。
生物の進化の道筋(系統)を解析し、系統間の関係に基づく分類体系を系統分類と言います。遺伝子など、生物の特徴の情報は、DNAを構成する4つの塩基の配列として書き込まれていますが、近年、塩基配列の解析技術が飛躍的に進歩したこともあって、各生物のDNAの塩基配列を直接比較することができるようになりました。そのような技術的な進歩もあって、1990年以降は、各生物の塩基配列の異同から系統間の関係をより客観的に、信頼性高く推定できる分子系統分類体系(APG分類体系)が主流になっています。
それ以前は、外部形態の比較による手法がとられていましたが、代表的な分類体系としては、ドイツのエングラーとアメリカのクロンキストによるものがあります。エングラーの分類体系は1900年ごろ発表され、その後改訂を加えられたものですが、種子植物を先ず、胚珠が裸出している裸子植物と、子房によって包まれている被子植物に分けます。被子植物は発芽種子の子葉が1枚か、2枚かによって単子葉類と双子葉類に分けます。さらに双子葉類は花弁の基部が離れているか、くっついているかによって離弁花植物と合弁花植物に分けました。さらに花の構造などをもとに、いろいろな科に分類していきました。牧野日本植物図鑑はエングラーの分類体系に基づいて作られており、もっともなじみ深いものです。クロンキストの分類体系は1980年代に提唱された新しい体系です。モクレンなど雌しべや雄しべがが多数、らせん状に配列している花がもとになって、いろいろな構造をもつ花が進化したと考えて作られた体系です。朝日新聞社から出版された145分冊からなる百科シリーズ「植物の世界」は、クロンキストの分類体系に準じています。花の構造が、系統を反映することが多く、生育環境によって影響を受けにくいことなどから、どちらの分類体系でも主要な分類基準として用いられています。
バラ科全体の共通した特徴としては、花は両性で放射相称、がく裂片と花弁が各5枚、雄しべは多数、多くは雌しべも多数、という点があげられます。また、花弁が花の他の器官に比べ目立ち、萼片の基部が筒状になるという点も共通しています。バラ科は花の特徴が共通するものを集めたグループと言えます(植物の世界、5-66)。バラ科植物の範囲はAPG分類体系の結果とも一致しています。
すなわち、バラ科の植物は花の構造が上記のように共通している植物群を指します。ノイバラやセイヨウバラのようにとげがあるかどうかは関係ありません。なお、バラ科のバラは、国際的に共通であるRosaceaeという科名に対応する和名として日本植物分類学会が選定したものが用いられています。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-06-07