一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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水中の根は根腐れしない?

質問者:   会社員   クルミルク
登録番号4758   登録日:2020-06-12
植物が枯れる原因の一つに根腐れとありますが、根が呼吸出来なくて(酸素の量が少なくて)枯れてしまうのですよね?

それなのに、挿し穂などを水の中に入れた時に根が出てきます。

水中の酸素の量は少ないと表記されていたと思いますが、水中根は土の中で伸びた根と性質が違うのですか?

植物によっても違うと思いますが、ヒヤシンスなどは水中根が固く太いと思います。(上部に空気必要な事は知ってます)

質問は、
同じ植物でも水中根と土中根では、根の性質が違い、さらに水中の中で出た根は酸素の吸収力が違うのか?

という点です。

謎はたくさん有りますが
宜しくお願いします。

クルミルク様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。土壌における根の酸素吸収については、登録番号1130に説明されていますのでそれをご覧ください。
水耕における根の酸素吸収は水の溶存酸素の濃度に依存します。酸素の溶存濃度は大気圧、水蒸気圧によっても影響されますが、普通の栽培条件でおそらく一番大きく影響を受けるのは温度でしょう。酸素(他の気体も)の溶存濃度は水温が低いほど高いです。したがって植物の水中根が酸素不足になるかどうかは水温が関係します。
しかし、登録番号1130の回答にもあるように、根への酸素の供給は柔細胞組織の細胞間隙を通して地上部からも供給されますので、簡単に根が死んでしまうことはないと思います。水耕する時水を交換しないでおくと、各種のバクテリヤや微生物が繁殖して、ほぼ酸欠状態になり、また、根の成長に好ましくない物質などが蓄積して、それが原因で根の成長が抑えられ、ひいては死んでしまうことになります。同じ植物で、水耕と土壌栽培とでは本質的に根の構造や形態に違いはありません。吸収する酸素の量はどちらの場合でも、溶存酸素濃度によりますし、植物自体の齢、生理的条件によっても一概に比較できないと思います。
ご存知だと思いますが、適切な培地で、エアレーション(曝気)が十分であると根の成長は極めて著しく、植物も大きく育ちます。エアレーションすることにより、絶えず水耕培地の溶存酸素濃度を最大にしているからです。


勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-06-13
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