一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ねぎ坊主の花からオレンジ色の汁が

質問者:   その他   ももも
登録番号4759   登録日:2020-06-12
こんにちは。
いつも楽しく拝見しています。

ねぎ坊主(アリウム/ギガンチウム/ギガンジューム)の茎を切るとオレンジ色の汁が出てきて、しばらくするとバケツの水までオレンジ色になるもので、ほかの切花はこんなことないな〜と思っていたのですが、このオレンジ色はどこから来たのでしょうか。

また、切り口をみると どのねぎ坊主も外縁部がオレンジ色になっており、単子葉類なら散在するのでは…? とも思いました。なにかヒミツがあるようでしたら教えてください。

どうぞよろしくお願いいたします。
ももも さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
Allium giganteum Regel(オオハナニラ、Giant Onion)は南西アジアから中央アジアに自生するネギ属(Allium)の仲間で植物体や花(花序)が大きく、日本では観賞用のみの園芸品種として改良、栽培されてきたものです。Melanocrommyum亜属に属するオオハナニラやニンニクに特徴的なこととして組織に傷害を与えるとかなり急速にオレンジ/赤色あるいは黄色の色素が合成され、色素を含む汁液が出ることで、染料として広く用いられていたようです。オオハナニラの赤色色素は2008年にドイツの研究者達が化学構造が提案しましたが、2011年チェコの研究者たちが修正し、生合成過程も提案しています。その構造、生合成過程を文章だけで説明することがたいへん困難で、一連の複雑な化学反応過程を経て生成されます。出発物質はニンニク、オオハナニラなどネギ科に含まれる無色のアリイン(alliin)(アミノ酸の1つシステインにアクリル基がついたもので硫黄と窒素が含まれている)が酵素アリイナーゼ(alliinase)で切断され、硫黄を含む分解物同士がさらに自動的に結合反応を起こして生じた反応性の高い中間物質が、他のアミノ酸類との反応を含む一連の化学反応で最終的に2個のピロール環(窒素原子を含む五員環)、2個の硫黄原子をもつ三環状構造の橙赤色の分子を生成します。この色素の構造名は「3,3’'-エピジチオ-2,2'ジピロール(3,3’-epidithio-2,2’-dipyrrole)」で、一般名はつけられていません。オオハナニラとニンニクはともに橙赤色の色素を生成しますが、その生成の速さはオオハナニラの方が圧倒的に早く、また中間反応物質も少しばかり違うようです。
2つ目のご質問ですが、オオハナニラの花火状の大きな玉は花序(花の集まり)で一つ一つの花は小花梗を介して花托に散形状に結合しており、これが長い花梗に付着しているものです。ヒガンバナなども同じで、花梗は茎の一種ですが円筒形で節はなく、光合成を担う細胞群が比較的厚く管状に配置され、維管束はその中を通っています。中心部は若い間は無色の柔組織で満たされていますがやがて柔組織は崩壊し円筒形となります。したがって単子葉類の通常の茎とはちがい花梗では維管束が管の周辺組織に配置された形になっています。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-06-17
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