一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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藻類の脱色について

質問者:   会社員   ゆか
登録番号4764   登録日:2020-06-17
プラスチックのボトルに水を入れていたらボトルの内壁に藻が繁殖して、緑色になっていたので、家庭用のスチームクリーナーで、蒸気をあててみました。
数日放置したら、スチームをあてたところが、透明になっていました。
そこで疑問におもったのですが、
これは藻が死んでしまったからということでしょうか?
同じ光合成を行う野菜や海藻などは、加熱をしても透明にならないのに、なぜ、ボトルに生えた藻は、色がなくなってしまったのでしょうか?
ゆか 様

この質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。プラスチックボトルの内壁を緑色にしているのは緑藻や珪藻あるいはシアノバクテリアなどの微細藻類でしょうね。スチームクリーナーの熱い水蒸気に曝された後、色素が脱色されて透明になるとのこと、原因としては次の(1)~(3)の可能性が考えられます。(1)スチームに曝されることにより藻体のプラスチックへの付着力が弱められ、壁から剥がれ落ちてしまった;(2)スチームが当ることによって藻が死んでしまって藻体の色素の退色が促進された;(3)(2)の過程の進行に伴って、藻の死骸がプラスチックの表面に固着して透明な構造体を形成するようになった。
なお、緑色を呈する色素はクロロフィルで、この色素は生体内では膜の中に埋め込まれたタンパク質に結合して安定な状態に保たれています。しかし、細胞がスチームに曝され、さらに乾燥すると、先ずはタンパク質が変性して機能を失い、光や酸素の影響を受けて色素の退色が進むことが考えられます。野菜や海藻の場合には加熱しても退色しないのにプラスチック
の内壁に付着した藻の場合にだけ退色が起こるのは何故かと問われていますが、両者では組織の層の厚さ・水分含量・安定性などに違いがあるのではないかと思われます。現物を見ないと確信がもてませんので、ここでは可能性を示すことで回答とさせていただきます。


佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-06-26
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