質問者:
教員
バロメッツ
登録番号4771
登録日:2020-06-25
小学校で、初めて理科の担当になりました。みんなのひろば
種子の「発芽」の開始は発根か出芽か
5年生の理科で、インゲンマメを使った発芽の実験を行います。 種子の「発芽」の定義を最初におさえるのですが、教科書には「芽が出ること」 教師用の指導書には「芽や根が出ること」とあり、辞典などでは「発育を始める現象」とか、 いろいろ分かれています。
たとえば、緑豆豆は、水没させてもほとんど100%が発根するようです。発根が発芽なら「発芽率が下がる」「発芽しない」などの表現はできなくなります。出芽が発芽なら、「根は出るけれど芽は出ていないから発芽していない」等の表現となります。
今回は種子に限った話なのですが、「発芽」の開始はどうなっているのでしょうか。ご教示ください。
バロメッツ様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
小学校の理科の授業とのことですが、そこではあまり厳密な定義を教えるというよりは、種子を培地(土壌など)に播いて水分を与えると、種皮を破って種子の中で眠っていた幼植物体(胚)が成長を始めるという現象として教えればいいのではないでしょうか。種皮を破って最初に出てくるのは根(幼根)がふつうですが、場合によっては幼芽が最初ということもあります。例えば、イネの種子を水の中で発芽させると、最初に出て来るのは幼芽を内包した幼葉鞘(ヨウヨウショウ)です。根は後で出てきます。種子発芽とは「種子の中で休眠していた胚が成長を再開すること」と定義できます。
ここで種子胚について簡単に説明しておきます。種子の成熟に伴って、内部に次世代の植物体となる胚(植物の赤ちゃん)の発生が進み、種子の完成時には中の胚も完成し、一時それ以後の成長を停止して休眠状態になります。胚はふつうの植物では幼根、胚軸、子葉、幼芽からできており、幼根は成長が進むと根(主根)になり、胚軸は茎の一番下の節間(節が葉のつくところ)になります。子葉はいわゆる双葉(イネ科などの単子葉植物は別です)で、胚がまだ光合成ができなくて、成長のための栄養をここに貯めてある貯蔵物質(デンプン、脂肪、タンパク質)を分解して供給します。子葉がクロロフィルを作って光合成をする植物も沢山あります。また、子葉は小さく、種子の胚乳という組織に栄養分を蓄えている場合もあります。
幼芽は子葉の間、胚軸の先端にあり、これが伸びて(成長して)将来の茎の主軸となります。これらの基本的な事柄は参考書などにも書いてあると思いますが、本コーナーの登録番号 4557, 4713, 4742, 0290 を読んでください。
「発芽」という言葉は文字からすると、芽(地上部)が出てくるような印象を与えます。実験などではなく普通に種子を地面に播いた場合は確かにそうですね。しかし、厳密にいうと、根(幼根)が最初に出る場合がふつうなのです。それは、胚(植物)が成長を始め、継続していくためには給水がまず第一に必要だからだと考えられます。しかし、なにかの発芽実験をする時には、なにをもって発芽と判定するかという基準を決めておきます。幼根が一般的ですが、その場合も何mm以上とかの長さも決めておきます。勿論幼芽の成長開始(目に見える)をもって発芽と決めておいても構いません。私たちは種子から幼根や幼芽が出るという可視的な現象で「発芽」を見ていますが、ミクロのレヴェルでは種子が吸水をは始めた時から発芽へのプロセスは始まっています。
発芽という言葉は種子以外にも使われます。例えば、カビやシダなどの胞子にも使われますし、花粉にも使われます。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
小学校の理科の授業とのことですが、そこではあまり厳密な定義を教えるというよりは、種子を培地(土壌など)に播いて水分を与えると、種皮を破って種子の中で眠っていた幼植物体(胚)が成長を始めるという現象として教えればいいのではないでしょうか。種皮を破って最初に出てくるのは根(幼根)がふつうですが、場合によっては幼芽が最初ということもあります。例えば、イネの種子を水の中で発芽させると、最初に出て来るのは幼芽を内包した幼葉鞘(ヨウヨウショウ)です。根は後で出てきます。種子発芽とは「種子の中で休眠していた胚が成長を再開すること」と定義できます。
ここで種子胚について簡単に説明しておきます。種子の成熟に伴って、内部に次世代の植物体となる胚(植物の赤ちゃん)の発生が進み、種子の完成時には中の胚も完成し、一時それ以後の成長を停止して休眠状態になります。胚はふつうの植物では幼根、胚軸、子葉、幼芽からできており、幼根は成長が進むと根(主根)になり、胚軸は茎の一番下の節間(節が葉のつくところ)になります。子葉はいわゆる双葉(イネ科などの単子葉植物は別です)で、胚がまだ光合成ができなくて、成長のための栄養をここに貯めてある貯蔵物質(デンプン、脂肪、タンパク質)を分解して供給します。子葉がクロロフィルを作って光合成をする植物も沢山あります。また、子葉は小さく、種子の胚乳という組織に栄養分を蓄えている場合もあります。
幼芽は子葉の間、胚軸の先端にあり、これが伸びて(成長して)将来の茎の主軸となります。これらの基本的な事柄は参考書などにも書いてあると思いますが、本コーナーの登録番号 4557, 4713, 4742, 0290 を読んでください。
「発芽」という言葉は文字からすると、芽(地上部)が出てくるような印象を与えます。実験などではなく普通に種子を地面に播いた場合は確かにそうですね。しかし、厳密にいうと、根(幼根)が最初に出る場合がふつうなのです。それは、胚(植物)が成長を始め、継続していくためには給水がまず第一に必要だからだと考えられます。しかし、なにかの発芽実験をする時には、なにをもって発芽と判定するかという基準を決めておきます。幼根が一般的ですが、その場合も何mm以上とかの長さも決めておきます。勿論幼芽の成長開始(目に見える)をもって発芽と決めておいても構いません。私たちは種子から幼根や幼芽が出るという可視的な現象で「発芽」を見ていますが、ミクロのレヴェルでは種子が吸水をは始めた時から発芽へのプロセスは始まっています。
発芽という言葉は種子以外にも使われます。例えば、カビやシダなどの胞子にも使われますし、花粉にも使われます。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-06-29