一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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木材の二酸化炭素吸収量について

質問者:   会社員   さんかく
登録番号4773   登録日:2020-06-25
はじめまして。

近年、カーボンニュートラルな世界を構築しようと各国が動いていることもあり、以下疑問を持ちました。

各国で様々な木の植林がなされていると思うのですが、木の二酸化炭素吸収量は樹齢が大きくなると減退し、やがて木の呼吸量が吸収量を上回り、二酸化炭素の収支がマイナスになるのでしょうか。

ご回答頂けますと幸いです。
宜しくお願い致します。
さんかく 様

このコーナーをご利用いただきありがとうございます。回答が遅くなってすみません。

光合成の能力を失い、蓄積されている光合成産物を基質とする呼吸によって「カーボンネガティブ」に生きている樹木を想像することは難しいです。ただし、これは樹木全体についてのある程度の時間を通しての話で、実際には植物体の部分や生育の期間(季節のサイクルや昼夜の変化を含めて)によっては、光合成に依存して光独立栄養的に生活する側面と呼吸に依存して従属栄養的に生活する側面の両面があります。樹木の生長は初期の段階では急速ですが、次第に二酸化炭素の収支バランスの結果としてのバイオマス蓄積量は大きくは変化しない状態に至り、やがては枯死て行きつきます。植物の生長が減速する原因が何であるかについて答えるのは簡単ではありませんが、水分供給の不足による一般的な細胞活性の低下、光合成と呼吸の両方の活性の低下を伴う過程として減速が進行する場合が多いのではないかと思われます。この過程で時として二酸化炭素の収支バランスにマイナスが生じ、急激に老衰の過程に移って行くこともあるのかと思われます。ところで、枯れた樹木(バイオマスう)は長く残存するのが一般的で、(もはや自分自身の呼吸ではなく)、木材腐朽菌や細菌などによる腐敗の過程で二酸化炭素を放出して無機物質と化して行くのが自然の流れです。


佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-07-05
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