一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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薬剤散布を早朝や夕方に行う理由

質問者:   大学院生   たま
登録番号4775   登録日:2020-06-26
趣味でダリアを育てています。うどんこ 病が見られたので薬剤散布をしようと思い、そのやり方について調べていたところ、「薬害を防ぐために、薬剤散布は早朝や涼しい夕方におこなってください」と書いてありました。なぜこの時間帯に行ったほうがいいのか疑問に思い、調べたのですが、なかなかその理由を見つけることができませんでした。

そこで質問なのですが、なぜ早朝や涼しい夕方に薬散をしたほうが、薬害が出にくいのでしょうか?また薬害はどのような原理で発生するのでしょうか?

気になって夜も眠れません。。。。
たま様

 植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
 薬剤の葉面散布は早朝や夕方に行うのが一般的です。昼間に散布するのを避ける理由ですが、昼間は日光によって温度が上がり、乾燥することが多いためです。散布する薬剤濃度は植物に害を与えない濃度にしてありますが、乾燥すると薬剤を溶かしている溶媒、多くは水ですが、蒸発して薬剤濃度が高かまり、薬害を生ずることになります。
 薬害の他にも昼間を避ける理由があります。葉の表側はクチクラ層が発達していますので、裏面の気孔などから感染する微生物が多く見られます。薬剤の散布も裏面に行うのが有効です。高温や乾燥によって、昼間は葉が萎れて垂れている場合が多くみられますので、裏面に薬剤を十分散布するのが難しいという問題があります。早朝には葉は立ち上がっていますので、裏面にも散布し易くなります。
 一般的には早朝や夕方に散布すれば良いと言えるのですが、それぞれ問題がないわけではありません。夕方、涼しく、湿度が高い時などは、水分が長く葉の表面に残り、かえって微生物の繁殖を助けてしまうことがあります。また、朝方、霧が発生したり、朝露が降りる場合などは、散布した薬剤濃度が薄まったり、流れてしまう場合があります。実際に散布する場合は薬剤を飛散させないように、風が強い時には避けるという注意も必要だと思います。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-07-02