一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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花のにおいについて

質問者:   公務員   ほんわかすみれ
登録番号4780   登録日:2020-06-29
小学3年生の質問です。

「花の匂いには、いい匂いのするものと、臭いものがあります。どうしてですか?」またいい匂いのする花の種類を教えてください。
よろしくお願いいたします。

ほんわかすみれ 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

種子植物の生殖器官である「花」は、多くの場合、体表から容易に揮発する低分子の物質(精油成分ほか)を生産し、大気中に放出されたこれらの物質が動物(昆虫など)を花に誘い寄せたり花から遠ざけたりすることに役立っているようです。放出される物質の匂いについて、何をいい匂いと感じ何を臭い(嫌な)匂いと感ずるかは個人差があると思います。昆虫では、種類によって匂いの好き嫌いにかなりの差があるのかも知れません。「いい匂い・臭い匂い」は習慣に基づく人間の感覚で、日本人と西洋人では時として異なることがあるとも言われています。それにも関わらず、ヒトについて言えば、例えばバラの花の匂いはほとんどのヒトが良い匂いと感じ、ドクダミやクリの花の匂いについては意見が分かれ、また、ある種の花の匂いについてはほぼ共通して臭い匂いであると言う共通項があるのも事実です。他方で、昆虫については、ヒトがほぼ共通して悪臭と感ずる花にも多くの虫が集まって来るような例がしばしば認められますので、種類による好き嫌いの幅は非常に広いものと思われます。

そこで、ご質問についてですが、多くのヒトがいい匂いと感ずる花と臭いと感ずる匂いの花では発散している揮発物質の種類に違いがあるようです。化学的な用語で説明すると、良い匂いは「テルペン関連物質」・「シキミ酸関連物質」・「ケイ皮酸関連物質」などが原因で、臭い匂いはアミン類やスカトール類などが原因であると言われています。小学3年生に化合物の名前を挙げるのは少し早すぎると思いますので、説明する側にとって参考となると思われる書物を以下に紹介させていただきます(同じ質問者からの関連するQ&A登録番号4779で紹介したものと同じです)。

いい匂いのする花の種類については、デリケートな個人の感覚がありますので、先ずは小学生の方が自分の嗅覚でいろいろ探してみられることをお勧めします。販売されている香料や化粧品の有効成分について調べるのも香り成分への接近方法の一つかと思います。

(参考文献)「昆虫を誘い寄せる戦略-植物の繁殖と共生」川那部裕哉(監修)井上 健・湯本貴樹(編集)の第1章と第8章「花の香りの化学生態学(山岡亮平(著))」・・-平凡社刊(ISBN4-582-50023-4 C0345 P3200E)




佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-07-09