質問者:
会社員
八百屋の問屋
登録番号4823
登録日:2020-08-04
栽培中の両性F1パパイヤから雄花らしき花が咲きました。パパイヤの性転換
すべての節位で花柄の長い雄花の特徴がみられます。
可能性として採種時の交配漏れや海外出荷の際のコンタミネーションを疑い、目の前のそれは別品種の雄株であると考えました。
そんな中、両性株が特定気象条件下で外観上雄株のように化けるという話を耳にしました。
栽培を続け環境が整ってくると雄花の中に雌蕊を持った両性花が混じりだし、元に戻るというのです。
両性花(同性花)が気温影響を受けやすく果実形状が大きく変わる点や、高温時に花芽分化すると雌しべが退化し、いわゆる雄化するという事は知っていますが、今回は花の外観が雄そのものです。
また海外では雄株の樹の地際に杭を貫通させ刺激を与えることで雄花に着果させる性転換が良く知られるとのことで、やってみれば?と言われました。私には「まじない」としか思えませんが、WEBで調べると雄の花形に果実がなっている画像はいくつか確認できました。数年前に沖縄の新聞に雄花に実ったという記事も覚えがあります。
【質問】パパイヤの両性花(同性)は特定の気象条件(ストレス?)により外観上も雄株の特徴を有する花形に変異するような事例は過去にありますか?可能性はどのくらいでしょうか?
やがて気象条件が整うと着果することや、植物体への刺激など外部要因によって性が変わるような、両性パパイヤのYh染色体はそんなに不安定なのですか?
八百屋の問屋様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。しかしながら、この質問はパパイア(園芸学会ではこれが正式名です)という特定の果実の栽培に関する専門的な事柄ですので、残念ながら本学会の守備範囲ではありません。そこで複数の専門の方にお聞きして、以下のように回答をまとめました。なお、さらに専門的な詳しいことを知りたい場合にと、研究論文のリストを末尾に添付いたします。
【回答】
【質問1】 パパイアの両性株(両性花)は気温の影響を受けやすく、性変化を起こしやすいことはよく知られており、論文も多数ございます。沖縄県の気象条件下において、品種(Sunrise solo)の両性株における雌性不稔花(雄花状花)の発生率は、12月~2月(14.6~18.1℃)に高くなることを報告しております(添付論文)。しかしながら、花柄の長い雄株の特性を有した花は、沖縄の環境下では確認されておりません。また、雄株(雄花)が性変化(両生花へ変化)により果実着生する現象は希に見られますが、その要因が気象条件なのか栄養条件なのかはまだ解明されていない状況です。
【質問2】質問1の回答のとおり、両性株における雌性不稔花(雄花状花)が観察されます。この現象は、Yh染色体のHSY(Hermaphrodite Specific Region)領域に存在する性決定因子によるものと考えられますが、詳細な分子メカニズム(性決定因子の同定など)については明らかになっていません。
【参考文献】
Moritoshi Tamaki1,2, Naoya Urasaki2, Yoshinobu Sunakawa2, Keiji Motomura3 and Shinichi Adaniya3*(2011)Seasonal Variations in Pollen Germination Ability, Reproductive Function of Pistils, and Seeds and Fruit Yield in Papaya (Carica papaya L.) in Okinawa. J. Japan. Soc. Hort. Sci. 80 (2): 156–163. 2011. Available online at www.jstage.jst.go.jp/browse/jjshs1 JSHS © 2011
HENRY Y. NAKASONE(翻訳;出花幸之助・井上裕嗣)パパイアにおける果実の着生と発達. 沖縄農業、32(2):68-88(1997);http://hdl;handle:net/20.500 <http://hdl;handle:net/20.500>.12001/1373
Urasaki N. et al ,(2002) A male and hermaphrodite specific RAPD marker for papapya( Carica papapya L.). Theoer. Apploed Benet.104:281-285
Urasaki N. et al ,(2012) Digital transcriptome analysis of putative sex-determination genes in Papaya(Carica papaya). PLoS ONE 7(7):e40904.doi:10.1371/journal.pone.0040904
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。しかしながら、この質問はパパイア(園芸学会ではこれが正式名です)という特定の果実の栽培に関する専門的な事柄ですので、残念ながら本学会の守備範囲ではありません。そこで複数の専門の方にお聞きして、以下のように回答をまとめました。なお、さらに専門的な詳しいことを知りたい場合にと、研究論文のリストを末尾に添付いたします。
【回答】
【質問1】 パパイアの両性株(両性花)は気温の影響を受けやすく、性変化を起こしやすいことはよく知られており、論文も多数ございます。沖縄県の気象条件下において、品種(Sunrise solo)の両性株における雌性不稔花(雄花状花)の発生率は、12月~2月(14.6~18.1℃)に高くなることを報告しております(添付論文)。しかしながら、花柄の長い雄株の特性を有した花は、沖縄の環境下では確認されておりません。また、雄株(雄花)が性変化(両生花へ変化)により果実着生する現象は希に見られますが、その要因が気象条件なのか栄養条件なのかはまだ解明されていない状況です。
【質問2】質問1の回答のとおり、両性株における雌性不稔花(雄花状花)が観察されます。この現象は、Yh染色体のHSY(Hermaphrodite Specific Region)領域に存在する性決定因子によるものと考えられますが、詳細な分子メカニズム(性決定因子の同定など)については明らかになっていません。
【参考文献】
Moritoshi Tamaki1,2, Naoya Urasaki2, Yoshinobu Sunakawa2, Keiji Motomura3 and Shinichi Adaniya3*(2011)Seasonal Variations in Pollen Germination Ability, Reproductive Function of Pistils, and Seeds and Fruit Yield in Papaya (Carica papaya L.) in Okinawa. J. Japan. Soc. Hort. Sci. 80 (2): 156–163. 2011. Available online at www.jstage.jst.go.jp/browse/jjshs1 JSHS © 2011
HENRY Y. NAKASONE(翻訳;出花幸之助・井上裕嗣)パパイアにおける果実の着生と発達. 沖縄農業、32(2):68-88(1997);http://hdl;handle:net/20.500 <http://hdl;handle:net/20.500>.12001/1373
Urasaki N. et al ,(2002) A male and hermaphrodite specific RAPD marker for papapya( Carica papapya L.). Theoer. Apploed Benet.104:281-285
Urasaki N. et al ,(2012) Digital transcriptome analysis of putative sex-determination genes in Papaya(Carica papaya). PLoS ONE 7(7):e40904.doi:10.1371/journal.pone.0040904
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-08-31