一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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野菜の皮について

質問者:   中学生   あまみん
登録番号4830   登録日:2020-08-12
野菜の皮は、野菜の種類によっては
人間のように再生されますか?
ごぼうは、皮をむいたあと
そのままにしていたら
皮のようなものに変化しているように感じます。
また、新玉ねぎも放置していたら
茶色の皮ができていました。
これって、再生ですか?
あまみん様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

植物の組織に傷がつくと、水分が蒸発したり、微生物が感染しやすくなったりします。野菜に限らず植物はそれを防ぐための防御方法をもっています。傷口の細胞が分裂し、切り離された組織をふたたび癒合、修復するのも一つの方法です。これは質問内容で書かれている再生と言えるかもしれません。また、組織に傷がつくと、数分以内に過酸化水素が発生し、そのはたらきで周辺の細胞の細胞壁のリグニン化、スベリン化、ヒドロキシプロリンを多く含んだたんぱく質同志の結合などがおこります。それらの反応は細胞壁を物理的に強化し、水分の蒸発や微生物の感染を防ぎます。リグニンはフェノール性の物質がたくさん結合(重合)した物質で、樹木の幹に多く含まれ、強度を高めている物質です。スベリンは長鎖の脂肪酸やジカルボン酸などを含む重合体で水を通しにくい性質を持っている化合物です。
食用にするタマネギの球は鱗茎といって多肉化した多くの葉(鱗片葉)が重なりあってできています。放置していたら茶色の皮ができたということですが、一番外側の鱗片葉は水分を失いやすく乾燥します。また、光が当たることでケルセチンなど黄色の色素がつくられます。茶色の皮は、一番外側の鱗片用での色素合成と乾燥で生じたのだろうと思います。再生の定義は「再生とは個体の一部分が何らかの理由で失われた際にそれに該当する部分が補われる現象」(岩波生物辞典)となっています。鱗片葉が失われたわけではありませんから、ちょっとちがいますね。また、ゴボウの皮をむいてそのままにしていたら皮のようなものに変化したということですが、そのままというのはどのくらいの時間でしょうか?すぐということでしたら、切り口が空気中の酸素に触れることで、フェノール性の物質が酸化されて黒色色素を生じます。表皮の色のように見えるかもしれません。再生したとするなら、日単位の時間がかかるでしょう。調べてみないと判定できません。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-08-23