質問者:
会社員
T
登録番号4840
登録日:2020-08-17
先日見た昆虫のドキュメンタリーで、雌雄の大きさの違いについて語られておりました。植物の性差
その際、植物ではどうなんだろうと疑問に思い、質問させて頂きました。
動物では雌より雄の方が大きく、昆虫では雄より雌の方が大きいことが一般的ですが、植物の雌雄異株でも植物体の大きさに性差が発生するのでしょうか。
また、雄に大きく綺麗な羽が見られる孔雀の様に、大きさ以外でも特徴的な性差のある雌雄異株の植物は存在するのでしょうか。
T様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。被子植物は約2,500,000種類ありますが、そのうち雌雄異株の種は15,000種(60科1,300属)たらず(約6%)で、わずかしかありません。一般的にこれらの雌雄異株の植物は動物と異なって、生殖器官である花をつける前に雌雄の区別を形態的に可視的にはっきり見分けることは難しいです。しかし、雌株と雄株は遺伝的には当然異なるわけです。雌花を作ることは、受精すれば種子が形成され、果実もできるでしょう。一方、雄花は花粉さえ作れば良いわけです。従って生殖活動に必要なコスト(エネルギー供給)は雌株の方が断然大きいと言えます。進化の過程でこのような生殖形態を発達させてきた種は、当然それに対応できるようなんらかの生理的、形態的差があるに違いないという考えがあります。そのような性差についてのを研究報告はありますが、雌雄異株の植物をひとまとめにして、これが特徴的な性差であるということはできません。そのような性差は種によっても異なりますし、生育地域によっても異なることがあるようです。雌雄異株の植物の中では、例えば、キウイ、アスパラガス、パパイヤ、ホップ、デーツヤシ、ピスタチオ、ジオイカ(インドや南アジアで野菜として食されているウリ科のMomordica dioika (spiny gourd:とげのあるひょうたん)、裸子植物のソテツ、イチョウなど、多くの食用や医薬用など有用な植物がありますので、これらを栽培する上で、植物成長の早い時期に雌雄の判別することが望まれています。現在では遺伝子など分子レベルでの判別法が広く利用されています。
形態的な性差はあるとすれば、雄株は雌株に比べて成長の勢いが良い、したがって葉条のサイズも大きいことが見られます。これは生殖活動のコストの大小と関係しているとも考えられます。また、種によって葉の形状(切れ込みなど、葉縁の形状)に違いが見られることもあるようです。種子の段階では、高山植物のスノードック(Rumex nivalis) やホウレンソウは雄性種子の方が雌性種子より重いという報告があります。何れにしても雌雄異株の植物で、栄養成長時期に特別な器官や外部形態的構造など特徴的な性差があるものは見つかりませんでした。
植物は動物と違って行動できないのですから、生殖行動においてセックスを直接アッピールする必要はありません。花粉が雌花の柱頭に運ばれれば良いわけです。花粉の運搬は風媒のように受動的な場合もありますし、昆虫の助けを借りる虫媒もあります。後者の場合は昆虫(鳥などもありますが)を呼び寄せて花粉を運んでもらうために、花は形状、色、香り、蜜腺などで工夫を凝らしています。また、雌花も昆虫に花粉を持ってきてもらうためにやはり同じような工夫を凝らしています。というわけで、「大きさ以外でも特徴的な性差のある雌雄異株の植物は存在するのでしょうか」という質問には「多分ないです。」というのが答えです。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。被子植物は約2,500,000種類ありますが、そのうち雌雄異株の種は15,000種(60科1,300属)たらず(約6%)で、わずかしかありません。一般的にこれらの雌雄異株の植物は動物と異なって、生殖器官である花をつける前に雌雄の区別を形態的に可視的にはっきり見分けることは難しいです。しかし、雌株と雄株は遺伝的には当然異なるわけです。雌花を作ることは、受精すれば種子が形成され、果実もできるでしょう。一方、雄花は花粉さえ作れば良いわけです。従って生殖活動に必要なコスト(エネルギー供給)は雌株の方が断然大きいと言えます。進化の過程でこのような生殖形態を発達させてきた種は、当然それに対応できるようなんらかの生理的、形態的差があるに違いないという考えがあります。そのような性差についてのを研究報告はありますが、雌雄異株の植物をひとまとめにして、これが特徴的な性差であるということはできません。そのような性差は種によっても異なりますし、生育地域によっても異なることがあるようです。雌雄異株の植物の中では、例えば、キウイ、アスパラガス、パパイヤ、ホップ、デーツヤシ、ピスタチオ、ジオイカ(インドや南アジアで野菜として食されているウリ科のMomordica dioika (spiny gourd:とげのあるひょうたん)、裸子植物のソテツ、イチョウなど、多くの食用や医薬用など有用な植物がありますので、これらを栽培する上で、植物成長の早い時期に雌雄の判別することが望まれています。現在では遺伝子など分子レベルでの判別法が広く利用されています。
形態的な性差はあるとすれば、雄株は雌株に比べて成長の勢いが良い、したがって葉条のサイズも大きいことが見られます。これは生殖活動のコストの大小と関係しているとも考えられます。また、種によって葉の形状(切れ込みなど、葉縁の形状)に違いが見られることもあるようです。種子の段階では、高山植物のスノードック(Rumex nivalis) やホウレンソウは雄性種子の方が雌性種子より重いという報告があります。何れにしても雌雄異株の植物で、栄養成長時期に特別な器官や外部形態的構造など特徴的な性差があるものは見つかりませんでした。
植物は動物と違って行動できないのですから、生殖行動においてセックスを直接アッピールする必要はありません。花粉が雌花の柱頭に運ばれれば良いわけです。花粉の運搬は風媒のように受動的な場合もありますし、昆虫の助けを借りる虫媒もあります。後者の場合は昆虫(鳥などもありますが)を呼び寄せて花粉を運んでもらうために、花は形状、色、香り、蜜腺などで工夫を凝らしています。また、雌花も昆虫に花粉を持ってきてもらうためにやはり同じような工夫を凝らしています。というわけで、「大きさ以外でも特徴的な性差のある雌雄異株の植物は存在するのでしょうか」という質問には「多分ないです。」というのが答えです。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-08-29