質問者:
一般
うもも
登録番号4841
登録日:2020-08-18
前回の「イシクラゲはアルカリ土壌に多いですか?」という質問への回答本当にありがとうございます。娘も大喜びです。藻が酸素を発生すると、アルカリ性に傾く仕組みはどうなっているのか。藻とイシクラゲの動きを同じと考えてよいか?
更に、質問なのですが、お願いできますでしょうか。
はじめに前回の質問に至った経緯をまとめておきます。
①娘が2年生の時、「ままごとで遊ぶ時に使う、庭のワカメの名前は何?」と聞かれ、イシクラゲという名前を知り、状態変化が面白かったので、どれぐらい水を含んで大きくなるかなど、試していました。
②4年生になった時、シアノバクテリアということを知り、植物のように、本当に光合成、呼吸、でんぷん反応をするのかと葉緑素の確認実験をしました。
光合成は、ライトの下で、気泡を確認できたのですが、呼吸は石灰水ではうまく確認できませんでした。でんぷん反応は、ヨウ素液が赤紫に変わったので確認できました。葉緑素も、熱したエタノールに流れ出ました。
③さらに、家のイシクラゲが庭中に広がったので、さすがに、減らさなければいけないと思い、イシクラゲを消滅する方法を探すために、イシクラゲの死んだ状態を探しました。密封して暗闇においたビンの中のイシクラゲを観察すると、ベロベロの黄土色で、顕微鏡でみても数珠つなぎがバラバラになっており、光合成もしなかったので、黄土色でベロベロになったら死んだ状態と認識してよいだろうと考えました。
④5年生になった今年、家にある酸性、アルカリ性の液体などを使って、イシクラゲを消滅させる方法を調べようと思っていました。しかしイシクラゲは、役に立つのではと考えを改めました。イシクラゲがある家の庭のpHが、梅雨の間、6.6〜7位だったので、pHの低い土に苦土石灰の代わりに土に混ぜたらどうなるのかと思った次第です。
以上が、前回の「イシクラゲはアルカリ土壌に多いですか?」の質問の経緯でした。
質問内容: その後、娘との観察で、さらにアルカリ性かを調べるため、イシクラゲをBTB溶液につけたところ、光合成をするとともに青色に変化し、夜になると緑色に変わり、また次の日青色になりました。このことから、酸素の発生とともにアルカリ性へ傾き、二酸化炭素の発生で中性に傾いていると考えました。
その仕組みがよくわからなかったので、ネットで色々調べていると、藻の入った水槽が、光合成とともにアルカリ性に傾き、夜、中性になるとありました。
再度、晴れの日に、カラカラに乾燥してしまったイシクラゲのある庭で測定すると、pHが5.6くらいに下がっていました。酸素を発していないからでしょうか。
うもも様
小学生のお嬢さんとお二人で、すごい理科の実験をなさっているのですね。4年もかけて一つのことを系統だって検討していく姿勢は研究者のものです。素晴らしいことです。また、素晴らしいお母さんですね。敬服いたします。私は光合成やシアノバクテリアの専門家ではありませんので、詳細な専門的な観点からの回答はできませんが、一般的は生物学的見解としてお答えいたします。シアノバクテリアでも様々な種類があり、残念ながらイシクラゲについては、培養上の問題などもあって、研究材料として広範には用いられてきませんでしたが、最近イシクラゲを研究材料として色々調べられ始められていることは先の回答に書いた通りです。
シアノバクテリアの光合成は植物の光合成と同じ様式で行われます。ちなみに緑色植物の細胞にある葉緑体は、遠い進化の昔の過程でシアノバクテリアが動物型の細胞に共生したのがオリジンであると考えられています(登録番号2070参照)。したがって、二酸化炭素と水とから炭水化物を合成し、酸素を放出します。お調べになった通りです。さて、藻の場合は水の中に生息していますから、水中に溶存している二酸化酸素を使うことになります。空気と接する水には酸素も溶存していますので、呼吸はこの溶存酸素が使われます。二酸化炭素は水中では次のような化学式で化学平衡を保っています。フリー(遊離)の二酸化炭素(CO2)は水中では少量しか存在せず、炭酸水素イオン( HCO3-)の形で存在しています。昼間、光合成が行われると、CO2が減少しますので、平衡を保つため反応は左方向に進みます。 HCO3-はカルボニックアントヒドラ-ゼという酵素の触媒作用でH2CO3となり、さらに脱水反応でCO2ができます。
CO2+H2O ⇔ H2CO3 ⇔ HCO3-+H+ ⇔ CO32-+2H+
したがって、昼間、光合成が行われて HCO3-が減少すると、pH値は上昇(アルカリ性)することになります。逆に夜間は光合成が行われなわれず呼吸だけなので、CO2が増加し、反応は右へ進んで、 HCO3-が増加するのでpHは低く(酸性)なります。イシクラゲは水の中に生息しているわけではありませんが、イシクラゲの細胞は寒天のような多糖類のマトリックスに包まれていますので、二酸化炭素はそのマトリックスの水分に溶け込んでいると思います。イシクラゲの場合も藻類と同じと考えてよいでしょう。
小学生のお嬢さんとお二人で、すごい理科の実験をなさっているのですね。4年もかけて一つのことを系統だって検討していく姿勢は研究者のものです。素晴らしいことです。また、素晴らしいお母さんですね。敬服いたします。私は光合成やシアノバクテリアの専門家ではありませんので、詳細な専門的な観点からの回答はできませんが、一般的は生物学的見解としてお答えいたします。シアノバクテリアでも様々な種類があり、残念ながらイシクラゲについては、培養上の問題などもあって、研究材料として広範には用いられてきませんでしたが、最近イシクラゲを研究材料として色々調べられ始められていることは先の回答に書いた通りです。
シアノバクテリアの光合成は植物の光合成と同じ様式で行われます。ちなみに緑色植物の細胞にある葉緑体は、遠い進化の昔の過程でシアノバクテリアが動物型の細胞に共生したのがオリジンであると考えられています(登録番号2070参照)。したがって、二酸化炭素と水とから炭水化物を合成し、酸素を放出します。お調べになった通りです。さて、藻の場合は水の中に生息していますから、水中に溶存している二酸化酸素を使うことになります。空気と接する水には酸素も溶存していますので、呼吸はこの溶存酸素が使われます。二酸化炭素は水中では次のような化学式で化学平衡を保っています。フリー(遊離)の二酸化炭素(CO2)は水中では少量しか存在せず、炭酸水素イオン( HCO3-)の形で存在しています。昼間、光合成が行われると、CO2が減少しますので、平衡を保つため反応は左方向に進みます。 HCO3-はカルボニックアントヒドラ-ゼという酵素の触媒作用でH2CO3となり、さらに脱水反応でCO2ができます。
CO2+H2O ⇔ H2CO3 ⇔ HCO3-+H+ ⇔ CO32-+2H+
したがって、昼間、光合成が行われて HCO3-が減少すると、pH値は上昇(アルカリ性)することになります。逆に夜間は光合成が行われなわれず呼吸だけなので、CO2が増加し、反応は右へ進んで、 HCO3-が増加するのでpHは低く(酸性)なります。イシクラゲは水の中に生息しているわけではありませんが、イシクラゲの細胞は寒天のような多糖類のマトリックスに包まれていますので、二酸化炭素はそのマトリックスの水分に溶け込んでいると思います。イシクラゲの場合も藻類と同じと考えてよいでしょう。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-08-18