一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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頂芽優勢の実験

質問者:   教員   K
登録番号4850   登録日:2020-08-26
高校生物の授業で、頂芽優勢を実験で確かめたいと思っています。
エンドウを使い、頂芽を切り取った場合に側芽が成長することはうまくいきました。
しかし、植物ホルモンを含む寒天の場合がうまくいきません。
インドール酢酸とカイネチンを使用しているのですが、ネットや手持ちの植物生理学の本では頂芽優勢の実験時のホルモンの濃度については書かれておらず、合っているのか分かりません。

そこで、頂芽優勢の実験でエンドウは適切であるのか。
またインドール酢酸、カイネチンの濃度はどの程度が適切か。
生徒でもやりやすい実験の方法等があれば教えてください。
よろしくお願いします。
K さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
高校の授業で生物実験を行うのは、とても大切なことですが、実験特に生物実験というものはやれば必ず期待する結果が得られる(成功する)というものではありません。授業で実験に失敗する経験を持ってしまうと余りよい教育効果が得られませんね。
さて、ご質問についてですが、「しかし、植物ホルモンを含む寒天の場合がうまくいきません。」について「何がどううまくいかなかったのか」上手くいかなかった状況が判りませんので確かではありませんが、IAA濃度が高すぎたか、あるいは低すぎたか、または寒天片(植物ホルモンを含ませた)がうまく付着しなかった、乾燥してしまったなどが考えられます。

「頂芽優勢の実験でエンドウは適切であるのか」:
問題ない材料です。多くの研究者がエンドウを用いています。材料は、エンドウとは限りません。簡単に入手できる野菜類の種子を発芽させた幼植物など何でも使えます。
緑豆は発芽成長が早いので便利です。子葉の間から茎が出ますが、この段階で茎先端を切断すると、子葉の付け根から腋芽が成長してきます(2本出ます)。

「インドール酢酸、カイネチンの濃度はどの程度が適切か」:
IAAなら10μM、カイネチン(ベンジルアデニンをお勧めします)なら1μMから始めて結果を見ながら前後の濃度を調べる。1%程度の寒天片が使いやすいのですが、1mm程度の薄い板状にしても植物ホルモン水溶液に浸して十分に拡散浸透させるにはかなり時間(最低24時間ほど)がかかります。それよりもラノリン(羊毛脂、市販されています)を使用した方が使いやすいと思います。試験濃度の植物ホルモン水溶液と等量(1mlならラノリン1g)をガラス棒などでよく混合すると乳白色のペーストが出来ます。これは使用した植物ホルモン水溶液がラノリンの中に分散された状態です。
粘着性がありますから、植物の切り口あるいは施用する場所に少量付着させます(爪楊枝の先を少し切り落としたものを使うとうまくいきます)。使用した濃度の植物ホルモン溶液と組織とが接することになります。ラノリンは生体組織に対しては無害です。
なお、このコーナーには頂芽優勢に関する質問が多くあります。登録番号1913, 2465, 2586は参考になります。また、最近の問題として登録番号4351のほか
https://blog.goo.ne.jp/rebun10b/e/ca66b0ed9cd9e5689424b8bbc4d2ec01 も(これは栄養供給説を復活させたものですが)、参考になると思います。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-09-04
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