一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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先駆植物(パイオニア植物)の定義について

質問者:   教員   o-emik
登録番号4851   登録日:2020-08-26
高校の生物基礎の教科書(数研出版)では、
「植物の生育にとってきびしい環境である裸地へ最初に侵入する植物を先駆植物という。先駆植物の多くはススキやイタドリなどの草本植物であり、場所によっては地衣類やコケ植物などが侵入することもある。」とあり、「遷移の初期に現れる種類の樹種を先駆樹種という。」という記述がされており、そのように私も理解しておりました。
ところが、NHK高校講座「生物基礎」第31回植生の遷移の分野で、遷移の説明で「オオバヤシャブシのように、遷移の初期の段階に現れる種を、先駆種といいます。」と説明されていました。
一部では先駆種と先駆樹種が、混同されているのでしょうか 
または、広義の遷移の説明では、先駆種に先駆樹種を含めるという理解でよいのか困っております。受験生にどう説明すべきでしょうか。
学会の見解をお聞きしたく、質問させていただきました。
o-emik 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

先駆植物というのは、質問内容で引用されておられる教科書の記載通りで、遷移の最初の段階で裸地に侵入する植物を指します。先駆植物が植物種全体を対象にしているのに対して、先駆樹種は植物の中でも樹木に注目して、遷移の過程で最初に現れる樹木を指しています。
先駆植物は侵入する裸地の成因や状態、その場所の環境条件などでさまざまです。火山灰や浮石が基盤になっている貧栄養の泥流上では、草本植物とともにハンノキ属やカバノキ属の樹木がほぼ同時に侵入することがあります。これらの樹木は遷移の最初の段階で裸地に侵入している植物ですので先駆植物ですが、遷移の過程の最初に現れる樹木ですので先駆樹種でもあります。植物全体に視点があるか、植物の中でも樹木に視点をおいているかの違いかと思います。NHK 高校講座「生物基礎」でとりあげられているハンノキ属のオオバヤシャブシは放線菌のフランキアが根粒を作り、空中窒素を固定しますので、貧栄養の上記のような裸地に遷移の最初の段階で侵入できます。
質問内容に書かれておられるように、先駆種(先駆植物)に先駆樹種を含めるということで良いと思います。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-09-09