一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

クスノキの虫えい(ダニ部屋)について

質問者:   一般   Furukou
登録番号4857   登録日:2020-09-01
クスノキには通常、ダニ部屋があると図鑑には書かれています。そこで、実際にダニ部屋を切断して観察しますと、確かに非常に小さなダニが見られました。そこで、つぎのような疑問が生じました。このダニはクスノキにどのような影響を与えているのでしょうか?また、このダニはクスノキ以外のところにも生息しているのでしょうか?さらに、クスノキには、いつ、どのようにして侵入するのでしょうか?
 いろいろな書物、ネットなどで調べてみましたがわかりませんでした。お教えいただけたら幸いです。
Furukouさん

みんなのひろば 植物Q&Aへようこそ。
質問を歓迎します。
回答は、植物の分類/生態/繁殖干渉の研究が専門の西田佐知子博士(名古屋大学博物館准教授)にお願いしました。

【西田先生の回答】
クスノキのダニ部屋の中を観察して、ダニを発見されたとのこと。小さいダニだと思いますが、よく見つけられましたね。
なお、ダニ部屋はダニ室とも呼びます。私はいつもダニ室と呼んでいるので、ここでもダニ室を使わせてもらいますね。
クスノキの葉のダニ室には、実は複数の種類のダニが見つかることがあります。
ご覧になったのは、長さが0.2ミリくらいで、イモムシのような体の前の方に短い足がついているダニでしょうか?
そうだとしたら、それはフシダニと呼ばれるダニの仲間で、まだ名前はよくわかっていません。このダニは、クスノキの葉の汁を吸って生きているようです。ですので、クスノキにとっては、悪い影響があるかもしれません。
上記のフシダニの仲間ではなく、体長が0.3-0.5ミリくらいで赤い色をしたダニなら、ナガヒシダニという肉食のダニで、おそらくフシダニを食べに来ているのではないかと思います。
また、 体長が0.3-0.5ミリくらいで黄色く、すばしっこく走るダニでしたら、カブリダニという肉食のダニで、こちらもフシダニを食べに来ているのではないかと思います。
ナガヒシダニやカブリダニは、フシダニなどを食べてくれるので、クスノキにはいい影響があると言えるでしょう。
さて。ではダニはどこから入ったのでしょう?
クスノキの葉を裏返して、ダニ室のあった部分を見て下さい。とても小さな穴があると思います。葉が若いときはこの穴がまだ大きめに開いていることがあり、その穴からダニは入ったと考えられます。
ただ、ナガヒシダニやカブリダニは大きいので、普通は穴の小さなダニ室には入れません。これら大きめのダニは、葉の上部にある、穴がかなり大きいままのダニ室にいることが多いと思います(ただし、ナガヒシダニは小さなダニ室の中に卵を生んでいることがあり、穴は小さいのに、中にナガヒシダニが入っていることがあります)。
このように、1枚のクスノキの葉にも、いろんなダニが見られることがあります。彼らにとっては、葉の1枚1枚が、大きな広場のようなものなのかもしれませんね。
ダニ部屋で検索しても情報が得られない場合は、ダニ室で検索すると出てくるかもしれませんので、よかったら試してみてくださいね。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-09-08