質問者:
高校生
ふな吉
登録番号4858
登録日:2020-09-02
界面活性剤が含まれている製品が植物に害を与える影響について調べています。みんなのひろば
界面活性剤の植物への影響
かいわれ大根を使った発芽実験をしたのですが、いくつかわからないことがあります。
プラスチックトレーに、スプーン1杯ほどのシャンプー、衣料用洗剤、台所用洗剤、柔軟剤を混ぜた水をそれぞれのトレーに入れました。そしてその上にかいわれ大根の種を撒き、成長段階を調べました。
結果は、柔軟剤を含んだ水で育てたかいわれ大根は4日目までは、何も入れてない水と同じくらい、もしくは水よりも順調に育ちました。しかし、5日目からは根上り現象が起き、枯れはじめました。他のシャンプー、そして2つの洗剤はほとんど育ちませんでした。
そのあと詳しく調べると、柔軟剤は陽イオン界面活性剤、洗剤は陰イオン界面活性剤ということが分かりましたが、そのことがどのように成長に作用したのかが分かりません。どうして柔軟剤が順調に育ったのでしょうか。根上り現象はどうして起こったのでしょうか。
ふな吉 さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「界面活性剤が含まれている製品が植物に害を与える影響」を調べるとありますが、各製品の影響を調べたいのか、含まれる界面活性剤の影響を調べたいのかがはっきりしません。
市販の「洗剤」は界面活性剤を主成分としていますが、それにも陰イオン型、陽イオン型、中性型、両性型とあり、さらにアルキル基の種類も多種あるので界面活性剤の種類だけでもたくさんになります。したがって実験に使用された洗剤が、シャンプー、衣料用洗剤、台所用洗剤、柔軟剤だと言っても、シャンプーにも、衣料用洗剤にも、台所用洗剤にも製造者(商品名)によって中身が違ったものがあります。それらは製造者によって独自のレシピーとなっていますので、そのままを供試材料としても結果を比較検討することが出来ません。ご質問にあるように「スプーン1杯ほどのシャンプー、衣料用洗剤、台所用洗剤、柔軟剤を混ぜた水」との記載だけでは「混ぜた水」の量も判らないし、洗剤濃度(界面活性剤の)も分かりません。今手元にあった食器用洗剤の記載を見ましたら、製品A)界面活性剤26%(アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド);製品B)界面活性剤37%(高級アアルコール形・陰イオン、ジアルキルスルフォコハク酸ナトリウム)、それに安定化剤、除菌剤、香料などが添加、とあり「台所用洗剤」でも製品により濃度も組成も違っています。ですから、違った製品を同じ量の水で希釈しても結果を相互に比較することができません。
いろいろな物質の生理学的効果を相互に比較するときには、注目する物質の濃度を同じにすることが必要です。また、共存する他の化合物などがない(あるいはみな全く同じ)ことが条件となります。
今回、ふな吉さんが得た結果から得た印象では、「洗剤」では界面活性剤の濃度が生理的には濃すぎたために種子、あるいは発芽初期の芽生えが死んでしまった、「柔軟剤」では主成分陽イオン型界面活性剤は洗剤としてではなく、繊維などに吸着させるのが目的なのでもともと低濃度だったために、発芽、成長はしたものの陽イオン型の殺菌(抗菌)作用のために異常成長を起こしたものと考えることが出来ます。生物の細胞では脂質膜が重要な生理機能を発揮します。界面活性剤は脂質膜を破壊する働きがあり膜系の生理機能が無くすことで生理的に有害です。植物ホルモンであるオーキシンですら濃度によって根の異常成長をもたらすことはよく見られる現象です。
界面活性剤の影響を調べたいのであれば、いろいろな界面活性剤は入手することが出来るはずです。純粋の化学薬品としての界面活性剤を発芽試験でどんな影響があるかを調べることは面白いことです。同じ濃度でも界面活性剤の種類が違えば発芽試験で違った結果がおきるでしょう。その違いは何処にあるのかを次に調べることが出来るかも知れません。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「界面活性剤が含まれている製品が植物に害を与える影響」を調べるとありますが、各製品の影響を調べたいのか、含まれる界面活性剤の影響を調べたいのかがはっきりしません。
市販の「洗剤」は界面活性剤を主成分としていますが、それにも陰イオン型、陽イオン型、中性型、両性型とあり、さらにアルキル基の種類も多種あるので界面活性剤の種類だけでもたくさんになります。したがって実験に使用された洗剤が、シャンプー、衣料用洗剤、台所用洗剤、柔軟剤だと言っても、シャンプーにも、衣料用洗剤にも、台所用洗剤にも製造者(商品名)によって中身が違ったものがあります。それらは製造者によって独自のレシピーとなっていますので、そのままを供試材料としても結果を比較検討することが出来ません。ご質問にあるように「スプーン1杯ほどのシャンプー、衣料用洗剤、台所用洗剤、柔軟剤を混ぜた水」との記載だけでは「混ぜた水」の量も判らないし、洗剤濃度(界面活性剤の)も分かりません。今手元にあった食器用洗剤の記載を見ましたら、製品A)界面活性剤26%(アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド);製品B)界面活性剤37%(高級アアルコール形・陰イオン、ジアルキルスルフォコハク酸ナトリウム)、それに安定化剤、除菌剤、香料などが添加、とあり「台所用洗剤」でも製品により濃度も組成も違っています。ですから、違った製品を同じ量の水で希釈しても結果を相互に比較することができません。
いろいろな物質の生理学的効果を相互に比較するときには、注目する物質の濃度を同じにすることが必要です。また、共存する他の化合物などがない(あるいはみな全く同じ)ことが条件となります。
今回、ふな吉さんが得た結果から得た印象では、「洗剤」では界面活性剤の濃度が生理的には濃すぎたために種子、あるいは発芽初期の芽生えが死んでしまった、「柔軟剤」では主成分陽イオン型界面活性剤は洗剤としてではなく、繊維などに吸着させるのが目的なのでもともと低濃度だったために、発芽、成長はしたものの陽イオン型の殺菌(抗菌)作用のために異常成長を起こしたものと考えることが出来ます。生物の細胞では脂質膜が重要な生理機能を発揮します。界面活性剤は脂質膜を破壊する働きがあり膜系の生理機能が無くすことで生理的に有害です。植物ホルモンであるオーキシンですら濃度によって根の異常成長をもたらすことはよく見られる現象です。
界面活性剤の影響を調べたいのであれば、いろいろな界面活性剤は入手することが出来るはずです。純粋の化学薬品としての界面活性剤を発芽試験でどんな影響があるかを調べることは面白いことです。同じ濃度でも界面活性剤の種類が違えば発芽試験で違った結果がおきるでしょう。その違いは何処にあるのかを次に調べることが出来るかも知れません。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-09-14