一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の祖先は、どうやって多細胞になったのか。

質問者:   大学生   ウミウシ
登録番号4871   登録日:2020-09-08
早速、質問させていただきます。

生物が単細胞から多細胞に変化するとき、コラーゲンが細胞をつなげる役割を果たしたのでは無いかと考えられていると教科書などに書いてあり、実際に学校でもそう学びました。
しかし、コラーゲンは、動物由来のタンパク質であり、植物はコラーゲンを作らないと思います。
植物には、コラーゲンが無い。では、植物の祖先はどうやって多細胞生物になったのでしょうか?コラーゲンに代わる多細胞化を引き起こすものがあるのでしょうか?
多細胞化してから、植物に変化したとも考えたのですが、全球凍結以前から細胞内共生し、バクテリアは多様化していたとの記述もあったので、それは難しいのでは無いかと思いました。

どうやって植物の祖先は多細胞化したのか、お答えいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
ウミウシ様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
回答は植物細胞の多細胞化について研究されておられる野崎久義先生にお願いいたしました。

【野崎先生の回答】
[多細胞化]
植物の中でも単細胞と近縁な初期多細胞生物が存在し、このような研究の進んでいる緑藻ボルボックス 系列の研究(<https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2013/47.html>、<http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2016/4667/>)によれば、以下のように考えられます。

1) 最初に単細胞生物の細胞周期・分裂様式に変化をおこし、娘原形質体が完全に千切れないようになります。
2) その結果、娘細胞同士の細部質の連絡が形成され、娘細胞同士はバラバラにならなくなります(単細胞生物ではバラバラになります)。
3) 2)の直後または同時に細胞外基質(細胞壁成分)が分泌され、娘細胞同士の連結が強固になり、細胞壁で覆われた多細胞体になります。細胞碧成分は陸上植物ではセルロースですが、ボルボックス系列では糖タンパク質です。

[細胞内共生による植物の進化]
2017年に葉緑体の直接の祖先に当たるシアノバクテリア(原核生物)が発見され、この生物を用いた解析から真核光合成生物(一次植物)の起源は20-21億年前と考えれらえるようになりました(<https://modia.chitose-bio.com/articles/32/>)。従って、22億年前の全球凍結の直後にシアノバクテリアの細胞内共生で単細胞の一次植物が誕生し、その後色々な植物の系統で多細胞化がおきたと考えられます。全球凍結以前に細胞内共生によって植物細胞が誕生し、多細胞化したかどうかは、これらを祖先とする現生の植物が発見されていないので、全くわかりません。
野崎 久義(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2020-09-14