質問者:
高校生
tgf_β_family
登録番号4889
登録日:2020-09-28
こんにちは。みんなのひろば
NAD+とNADP+
光合成ではH+の受容体がNADP+であるのに対し、呼吸ではNAD+なのはなぜですか?進化の過程や酵素活性の関係でなんらかのメリットがあるのでしょうか?
よろしくお願いします。
tgf_β_familyさん
みんなのひろばへようこそ
質問を歓迎します。
NAD+とNADP+はどちらも酸化還元の補酵素で、2価の酸化還元反応に利用されます。NAD+を例にとると、電子(e-)1個を受け取って還元されてNADとなりますが、この状態は不安定で直ちに周りのイオンや化合物から電子(e-)をさらにもう1個受け取ってNAD-となりますが、これは直ちに溶液中のH+と反応してNADHとなります。NAD+とNADHを比較すると、電子2個の酸化還元をしていることになります。NADP+とNADPHの酸化還元反応も同様に電子2個の酸化還元です。還元する能力は物理化学的には酸化還元電位という物差しによってあらわされますが、両者に差はなく、どちらも比較的還元力が強いです。では、細胞はなぜ似たような反応をする[NAD+・NADH]と[NADP+・NADPH]の二組の補酵素系を持っているのかというと、細胞は両者を使い分けることにより代謝経路をコントロールし、環境に適応しているからです。例えば、動物細胞で脂肪酸を酸化してエネルギー源として消費する反応系では酸化還元反応に[NAD+・NADH]を利用する酵素が使われ、逆に有機物の供給が十分で糖分などから脂肪酸を合成する反応系では[NADP+・NADPH]を利用する酵素が使われます。細胞は、細胞内のエネルギー供給が不足しているか過剰であるかによって反応の向きがきまるようになっていて、このようにして環境の変化に適応しており、これは進化の過程で出来上がった反応系です。
ここでは、動物細胞を例にとりましたが、細菌でも植物細胞でも状況は大変良く似た面をもっています。光合成の炭素同化系では、光が当たると葉緑体の光化学反応系と電子伝達系の働きによりNADP+はNADPHに還元され、同化反応に利用されて、デンプンや糖類を蓄積します。光合成炭素同化系の酵素では、主に[NADP+・NADPH]が補酵素として利用されています。これに対し、非同化器官の細胞では、また葉緑体でも暗所では、糖類などが分解されて呼吸などに利用されますが、この時の酸化還元反応では主に[NAD+・NADH]が利用されています。
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NAD+とNADP+はどちらも酸化還元の補酵素で、2価の酸化還元反応に利用されます。NAD+を例にとると、電子(e-)1個を受け取って還元されてNADとなりますが、この状態は不安定で直ちに周りのイオンや化合物から電子(e-)をさらにもう1個受け取ってNAD-となりますが、これは直ちに溶液中のH+と反応してNADHとなります。NAD+とNADHを比較すると、電子2個の酸化還元をしていることになります。NADP+とNADPHの酸化還元反応も同様に電子2個の酸化還元です。還元する能力は物理化学的には酸化還元電位という物差しによってあらわされますが、両者に差はなく、どちらも比較的還元力が強いです。では、細胞はなぜ似たような反応をする[NAD+・NADH]と[NADP+・NADPH]の二組の補酵素系を持っているのかというと、細胞は両者を使い分けることにより代謝経路をコントロールし、環境に適応しているからです。例えば、動物細胞で脂肪酸を酸化してエネルギー源として消費する反応系では酸化還元反応に[NAD+・NADH]を利用する酵素が使われ、逆に有機物の供給が十分で糖分などから脂肪酸を合成する反応系では[NADP+・NADPH]を利用する酵素が使われます。細胞は、細胞内のエネルギー供給が不足しているか過剰であるかによって反応の向きがきまるようになっていて、このようにして環境の変化に適応しており、これは進化の過程で出来上がった反応系です。
ここでは、動物細胞を例にとりましたが、細菌でも植物細胞でも状況は大変良く似た面をもっています。光合成の炭素同化系では、光が当たると葉緑体の光化学反応系と電子伝達系の働きによりNADP+はNADPHに還元され、同化反応に利用されて、デンプンや糖類を蓄積します。光合成炭素同化系の酵素では、主に[NADP+・NADPH]が補酵素として利用されています。これに対し、非同化器官の細胞では、また葉緑体でも暗所では、糖類などが分解されて呼吸などに利用されますが、この時の酸化還元反応では主に[NAD+・NADH]が利用されています。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-10-13