一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ヤマノイモのムカゴの雌雄は?

質問者:   一般   不思議いっぱい子
登録番号4902   登録日:2020-10-23
里山散策の一つにヤマノイモのムカゴのゲットがあります。何気なく食べていたムカゴですが、ヤマノイモは雌雄別株です。ということは、雌株についているムカゴを育てれば雌株のヤマノイモが育つということで良いのでしょうか?育ててみる以外の方法で証明できますか?
不思議いっぱい子 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

 里山散策で、むかごを採取、食卓にのせられるとのこと、楽しそうでいいですね。私もよく野山を歩き、ヤマノイモのむかごを見かけますが食べたことはありません。どのような料理ができるのでしょう?ご質問は里山散策から生まれたものですね。

 多くの植物は種子を作って繁殖します。種子形成の過程には、減数分裂によって作られた雌性配偶子の卵細胞と雄性配偶子の精細胞の融合という有性生殖の過程が含まれます。したがって、種子形成で生じた個体は、どちらの親とも異なる遺伝子構成をもつことになります。一方、植物によっては、個体の一部が切り離され、無性的に新たな個体を作り繁殖する植物もあります。むかご(珠芽)を作る植物もその例です。この場合は新たに作られた個体は、親の体細胞から切り離されたわけですから、その遺伝子構成も親個体とまったく同じになります。
 ヤマノイモのむかごは葉の付け根に存在する腋芽の枝の部分に養分を蓄えることによって形成されます。したがって、むかごから生じた個体の遺伝子構成は親個体のものと同じです。
ご推察の通り、雌株のむかごから生じた個体は雌株になります。ヤマノイモは種子も作りますので、種子でもむかごでも繁殖しますが、オニユリは3倍体ですので、種なしスイカ(3倍体)のように種子ができませんので、繁殖をもっぱらむかごで行います。ムカゴトラノオ、ノビルのように花が種子をつくるのをやめてむかご化し、むかごで繁殖する植物もあります。
 雌株と雄株の見分け方ですが、花が咲いている時であれば、花序(花の配列)が直立していれば雄株、下垂しておれば雌株と花を観察しなくてもすぐわかります。しかし、花期でない時の外部形態での見分け方は知りません。おそらくないのではないかと思います。雌株の花は雄しべが退化して仮雄しべになっており、雄株の花では子房が痕跡程度になっておりますので、それらの器官の発育に関係する遺伝子、あるいは、その機能に差があると考えられます。遺伝子、あるいは、その機能の差を調べれば判定可能とは思いますが。

 むかごによるような無性繁殖と種子による有性繁殖のメリット、デメリットについて植物Q&Aの 登録番号2155, 3733 に記載がありますので、参考にされると良いと思います。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-10-28
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