一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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夜顔の習性について

質問者:   一般   MM生
登録番号4903   登録日:2020-10-24
夜顔(夜会草)を5月に種をまき、最初の花が7月末に咲きました。その後、順次花をつけ9月末に咲き終えたと思っていました。その3週間後の10月中旬に、前に咲いていた花の花弁が落ちて、その残ったガクがいくつか膨らんで、花を咲かせました。
同じガクから2回目の花が咲いたことが不思議でなりません。(新たな蕾が出来たのではありません)
このようなことはよくあることなのでしょうか?
他の草花でもこのような咲き方をするものがあるのでしょうか?
まず、その習性とメカニズムを知りたいと思います。
咲く時間についても、夏のうちは夕方に開き初め早暁まで咲いていました。今(10月中旬)は、夜の10時ころに開いて翌日の昼頃まで咲いています。時には、夜開かなかった花が日昼に咲き出すこともあります。これは気温のせいかと思っています。
以上、ご教示くださいますよう。

金木犀がお彼岸の頃と10月中頃にも2度目の花をつけることは何回か経験しています。今年もそうでした。


MM生さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ヨルガオと同じヒルガオ科に属するアサガオの花成、変異について研究されている基礎生物学研究所の星野 敦先生に伺いました。花芽は節に形成されますが普通はある間隔で節が出来ますが、ときには節間が極端に短いこともあります。星野先生のお答えにある貫性花とは「なんらかの原因で花床組織の一部が活性化し、花あるいは花序の中に反復して花あるいは花序が形成される現象から出来た花」とされ、バラやキクにしばしば見られる現象です。キクでは花序の筒状花の中に舌状花が形成されることはしばしば観察されます。またバラその他の八重咲きも類似の現象と理解される場合もあります。ヒルガオ科では例がないとのことで、その発生はシロイヌナズナやバラでおこる仕組みだけではなさそうです。キク(短日植物)では長日条件や高温においた場合に発生するとの報告もあります。

【星野先生のお答え】
ヨルガオで観察された今回の現象は初耳です。ヨルガオの仲間であるサツマイモ属(Ipomoea属)の植物でも、そのような現象の報告例を存じ上げません。そのため、ご質問にうまく答えられそうにありません。まずは、花の根元(花柄)に紐などで目印をつけて、日を追って写真で記録なさってみてください。もしかしたら、偶然、そのように観察されただけで、実際には別々の花が咲いた可能性(例えば1つの花柄に2つの蕾が付いて、それぞれが9月、10月に咲いた可能性)を排除する必要がありそうです。
今回の現象とは少し異なりますが、1つの花が2度咲くように見える「貫性花」と呼ばれるものがあります。バラなどで観察されます。登録番号2494で後藤弘爾先生が解説されていますので、そちらを参照ください。また、サツマイモ属のアサガオでも2度咲くように見える「度咲」という咲き方があります。こちらは、登録番号4231で私が解説しております。どちらも、八重咲きの性質が2度咲くように見えることに関わっています。
それから、ヨルガオが咲く時刻についてですが、こちらは体内時計という仕組みが関与していると思われます。ヨルガオでの研究は進んでいませんが、アサガオの場合には開花との関係が調べられており、体内時計の作用で日没から10時間位で花が開くとされています。体内時計は光や温度の影響を受けますので、アサガオも季節毎に開花する時刻が移りかわります。また、あまりに低温だと花が開かないこともあります。
夜開くはずのヨルガオが日中に咲いたのも低温の影響だと推察されます。夜間は低温で開くことができず、日中に気温が上がって開いた可能性がありそうです。
星野 敦(基礎生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2020-10-28