質問者:
教員
あれ
登録番号4909
登録日:2020-10-30
高校で生物の教員をしております。植物は専門外なので教えていただけると助かります。みんなのひろば
フロリゲンの細胞内への取り込みについて
植物ホルモンの単元においてさまざまなホルモンの作用機序について、図説等には詳し目な記述があります。そこでフロリゲンのところには、FTタンパクが細胞内に入り細胞内の受容体と結合することで遺伝子の転写を制御している図があります。その図には細胞内に入る際の記述は一切ありません。タンパクであれば通常細胞表面に受容体が存在するか、細胞内に取り込むような仕組みがあってもよさそうな気がしますが、この点はどうなっているのでしょうか。他の植物ホルモンの作用機序では細胞表面の受容体の記述があったので、フロリゲンはどうなのかと思いました。よろしくお願いします。
あれ さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
回答が遅れ申し訳ありません。
フロリゲンの実体、移動(転流)、作用の仕組みについては他の解説などで理解されておられますので、ご質問の中心点だけにお答えします。篩管内を輸送されたフロリゲンが茎頂分裂組織に達したあとの細胞間の移動は原形質連絡(Plasmodesma、以下PD)を通ります。この質問コーナーの登録番号1168, 4580でも解説されておりますのでご参照下さい。
PDについて若干補足しておきます。PDは隣接する細胞間の細胞壁を貫通するトンネルのような構造体で、細胞の種類、存在場所にもよりますが細胞当たり数千から10万を超えて存在し、隣接細胞の細胞質をつなげています。植物体内の物質移動(転流)にシンプラスト(Symplast)とアポプラスト(Apoplast)を介する経路がありますが、Symplast経路はPDによって全細胞の細胞質がつながっていることによる経路です。トンネルの内壁は細胞膜(隣接する細胞の細胞膜がつながっています)でさらにその中に小胞体も細い管状となって貫通し、その周辺にはアクチンとかミオシンなどを含む多くのタンパク質が分布しています。したがってトンネル内の自由空間は意外と狭く、イオン、糖類や低分子の多糖類、RNAなどは自由に通過出来る細胞質自由空間がありますが、高分子のタンパク質、RNA、ウイルス粒子などは自由拡散では通過できない空間と理解されいます。しかし、トンネル内に分布するタンパク質との相互作用でトンネルの太さを調節して通過する仕組みがあります。ウイルスやフロリゲンもトンネル内タンパク質と相互作用をしてトンネルの太さを調節して通過していることが分かっています。
花成がおきる茎頂分裂組織につながる篩部は原生篩部でたくさんのPDがあり、茎頂分裂組織細胞へフロリゲンが到達します。細胞内へ移動したフロリゲンは参照された図説のとおり受容体とされる14-3-3タンパク質、転写因子FDと結合して核内へ移行、花成誘導複合体を形成して一連の遺伝子発現を誘起すると理解されています。しかし、PDの高分子通過調節の仕組みは栄養成長期、生殖成長期それぞれにおいて細胞の位置、生理齢の違いなどによって極めて精緻に調節されていること、また同一タンパク質の細胞内存在状態でも通過の可否が調節されていることを付言しておきます。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
回答が遅れ申し訳ありません。
フロリゲンの実体、移動(転流)、作用の仕組みについては他の解説などで理解されておられますので、ご質問の中心点だけにお答えします。篩管内を輸送されたフロリゲンが茎頂分裂組織に達したあとの細胞間の移動は原形質連絡(Plasmodesma、以下PD)を通ります。この質問コーナーの登録番号1168, 4580でも解説されておりますのでご参照下さい。
PDについて若干補足しておきます。PDは隣接する細胞間の細胞壁を貫通するトンネルのような構造体で、細胞の種類、存在場所にもよりますが細胞当たり数千から10万を超えて存在し、隣接細胞の細胞質をつなげています。植物体内の物質移動(転流)にシンプラスト(Symplast)とアポプラスト(Apoplast)を介する経路がありますが、Symplast経路はPDによって全細胞の細胞質がつながっていることによる経路です。トンネルの内壁は細胞膜(隣接する細胞の細胞膜がつながっています)でさらにその中に小胞体も細い管状となって貫通し、その周辺にはアクチンとかミオシンなどを含む多くのタンパク質が分布しています。したがってトンネル内の自由空間は意外と狭く、イオン、糖類や低分子の多糖類、RNAなどは自由に通過出来る細胞質自由空間がありますが、高分子のタンパク質、RNA、ウイルス粒子などは自由拡散では通過できない空間と理解されいます。しかし、トンネル内に分布するタンパク質との相互作用でトンネルの太さを調節して通過する仕組みがあります。ウイルスやフロリゲンもトンネル内タンパク質と相互作用をしてトンネルの太さを調節して通過していることが分かっています。
花成がおきる茎頂分裂組織につながる篩部は原生篩部でたくさんのPDがあり、茎頂分裂組織細胞へフロリゲンが到達します。細胞内へ移動したフロリゲンは参照された図説のとおり受容体とされる14-3-3タンパク質、転写因子FDと結合して核内へ移行、花成誘導複合体を形成して一連の遺伝子発現を誘起すると理解されています。しかし、PDの高分子通過調節の仕組みは栄養成長期、生殖成長期それぞれにおいて細胞の位置、生理齢の違いなどによって極めて精緻に調節されていること、また同一タンパク質の細胞内存在状態でも通過の可否が調節されていることを付言しておきます。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-11-18