一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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木本?草本?

質問者:   一般   なか
登録番号4916   登録日:2020-11-19
つる性植物は、被子植物の各系統でそれぞれ独立に進化したものと考えられ、木本も草本もある、と以前のQ&Aで拝読し、興味を持っていました。
 ある図鑑でサルトリイバラ属の何種かについて「つる性木本~草本」との表記があるのを見つけました。同一種の中で木本と草本が存在するということにまず驚きましたが、これはよくあることなのでしょうか。あるいはつる性植物に多くあることでしょうか。
 一般に草本は木本から進化したと考えられているようですが、サルトリイバラ属の中でもこのような順序での進化が起こりつつあると考えるべきなのか、あるいは環境条件の違いにより両者が並存した状態にあるということなのでしょうか。サルトリイバラの木本と草本が将来的に分岐して別種とされる可能性はありますか。
なか様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問への回答は基礎生物学研究所副所長で生物進化研究部門の長谷部光泰教授にお願いしました。「同一種の中で木本と草本が存在する」とお考えになったのは、図鑑の説明不足かもしれませんね。

【長谷部先生の回答】
木本植物も草本植物も維管束形成層から二次木部と二次篩部を形成して肥大成長します。木本植物は、草本植物よりも維管束形成層の働きが強かったり、1年よりも長く成長を続けるため、草本よりも大きく育ちます。従って、木本植物も生育の初期は草本で、それが肥大成長によって時間がたつと木本になります。サルトリイバラは芽生えのころは茎葉が柔らかく草本のようですが、夏に花が咲く頃には茎がかなり硬くなります。お読みになった図鑑はそのような性質を説明するために、「つる性木本〜草本」と書いたのではないでしょうか。生物の進化には、子供の状態を維持するように進化する、幼型成熟という進化があります。ウーパールーパーが成熟してもえらを持っているのが良い例です。サルトリイバラも数百万年後に、若い草本のような段階で花を付けるように進化しているかもしれません。
長谷部 光泰(基礎生物学研究所生物進化研究部門)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2020-11-28
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