質問者:
会社員
野中
登録番号4927
登録日:2020-11-27
風媒花の受粉について不思議に思ったので質問させていただきます。銀杏は雄雌異株でお互いが数キロ離れていても受粉が可能です。5月に雄の木から花粉が放出される頃、雌の木は珠孔液を分泌して受粉の準備をして風に吹かれてくる花粉を待っています。5月といえばもっとも多数種類の花粉が飛んでいる時期です。 風が吹くままに運ばれる花粉ですが、どのようにして自分の正しい相手雌しべだと認識できるのでしょうか?空中には無数多数の花粉が常に飛んでおりますが植物達は受粉の相手を間違えません。ショ糖の培養に花粉管が伸びるそうですが、この原理が自然の受粉に適用されれば、植物の種類を保つのは不可能です。風媒花だけでなく虫媒花もハチの体についている無数の花粉の中から0、03mの花粉は自身の正しい相手、雌しべだとどうやって認識するのでしょうか?そのメカニズムは何なのでしょうか?
花粉の認識
野中様
質問コーナーへようこそ。歓迎致します。イチョウでなくても全ての植物の受粉/受精の過程ではどのようにして種のアイデンティティが保たれているのでしょうかね。百花繚乱などと言いますが、そんな状況下では百花の花粉が風により舞い散り、あるいは昆虫によって運ばれているはずです。しかし、受粉は植物の子孫繁栄の手段となる重要な第一歩です。だからそれぞれの種はちゃんと自分に適合した花粉だけが、受精に預かれるような仕組みを持っています。適合しない花粉を受け付けない、つまりそのような花粉では受精できないことを「不和合性」と言います。植物の中には同じ個体の花同士の花粉では受精しないものも多くあります。これを「自家不和合」と言います。これは近親交配を避けるためと言われていますねが、詳しいことは過去の質問への回答を読んでください。「自家不和合」という用語で検索すれば関連する質問が沢山ありますので、それぞれ読んでみてください。
さて、ではどのように他種の花粉と自分の花粉を識別するのでしょうか。つまり、適合する花粉は受け入れ、そうでないものは拒絶するのでしょうか。受粉〜受精の過程はまず、雌しべの柱頭への花粉の付着から始まります。続いて花粉の水和と発芽、花柱の中の花粉管の伸長と胚珠への到達、そして受精という順序で進行します。花粉と言っても種によってサイズも形態も様々です。大まかには直径25~100μm (μm:1/1000mm) のものが普通ですが、中にはオシロイバナ(220~250μm)、トウモロコシ(200μm)のように大型のものや、マンネングサ(10μm)、ワスレナグサの仲間(3μm)という小さいものもあります。形は球形、楕円形、紡錘形、角形、亜鈴形、等等様々です。さらに花粉の表面の模様や突起などの付属構造のあるものもあります。花粉がつく雌しべの柱頭もサイズや形状で違いがあります。一つには両者のこのような形態的な異なりが適正花粉の選択に関わっています。さらに、花粉の表層や柱頭を覆っている層の化学的性質が、花粉が柱頭に付着できるかどうか、そして花粉の水和とその後の過程に関係しています。他花の花粉はこれらの諸点が適合しないと柱頭への付着ができないのです。また、仮に付着できて花粉管を伸ばすことができたとしても、花柱が長すぎたりすると、途中で止まってしまうこともあります。受粉における和合・不和合の詳しい仕組みは分子レベルでも解明が進んでいますが、ここでは省略いたします。
質問コーナーへようこそ。歓迎致します。イチョウでなくても全ての植物の受粉/受精の過程ではどのようにして種のアイデンティティが保たれているのでしょうかね。百花繚乱などと言いますが、そんな状況下では百花の花粉が風により舞い散り、あるいは昆虫によって運ばれているはずです。しかし、受粉は植物の子孫繁栄の手段となる重要な第一歩です。だからそれぞれの種はちゃんと自分に適合した花粉だけが、受精に預かれるような仕組みを持っています。適合しない花粉を受け付けない、つまりそのような花粉では受精できないことを「不和合性」と言います。植物の中には同じ個体の花同士の花粉では受精しないものも多くあります。これを「自家不和合」と言います。これは近親交配を避けるためと言われていますねが、詳しいことは過去の質問への回答を読んでください。「自家不和合」という用語で検索すれば関連する質問が沢山ありますので、それぞれ読んでみてください。
さて、ではどのように他種の花粉と自分の花粉を識別するのでしょうか。つまり、適合する花粉は受け入れ、そうでないものは拒絶するのでしょうか。受粉〜受精の過程はまず、雌しべの柱頭への花粉の付着から始まります。続いて花粉の水和と発芽、花柱の中の花粉管の伸長と胚珠への到達、そして受精という順序で進行します。花粉と言っても種によってサイズも形態も様々です。大まかには直径25~100μm (μm:1/1000mm) のものが普通ですが、中にはオシロイバナ(220~250μm)、トウモロコシ(200μm)のように大型のものや、マンネングサ(10μm)、ワスレナグサの仲間(3μm)という小さいものもあります。形は球形、楕円形、紡錘形、角形、亜鈴形、等等様々です。さらに花粉の表面の模様や突起などの付属構造のあるものもあります。花粉がつく雌しべの柱頭もサイズや形状で違いがあります。一つには両者のこのような形態的な異なりが適正花粉の選択に関わっています。さらに、花粉の表層や柱頭を覆っている層の化学的性質が、花粉が柱頭に付着できるかどうか、そして花粉の水和とその後の過程に関係しています。他花の花粉はこれらの諸点が適合しないと柱頭への付着ができないのです。また、仮に付着できて花粉管を伸ばすことができたとしても、花柱が長すぎたりすると、途中で止まってしまうこともあります。受粉における和合・不和合の詳しい仕組みは分子レベルでも解明が進んでいますが、ここでは省略いたします。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-12-04