一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ツル性植物の根系

質問者:   自営業   ミント
登録番号4940   登録日:2020-12-13
植物の地上部と根系が相似になっていると聞き、雑草を掘ってみると、枝振りと根の張り方が相似のように見えました。

堀った雑草は自立した状態でしたが、アサガオやウリ科の野菜、巻きつかなくてもツル状に伸びる植物は地上部と根系は似ているのでしょうか?

生長の途中で、ツルの向きを人の手で動かしたら根も同じように向きを変えたりするのでしょうか?(巻き付いているツルを取って地面に這わせるなど)

ツル性植物の根系が地上部のツルの様に細長く、また同じ向きに生長するのか教えて頂きたいです。
ミント様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
ご質問の内容をはっきり理解できないのですが、ミントさんは「地上部と根系の形態が相似の関係にある」という情報をどこかで得られたのですね。植物形態学の観点から、地上部と根系の形を位相幾何学(トポロジー)的に比較すると同じ位相性質を持っています。
どういうことかというと、根も地上部もそれぞれの形を切り張りしないで、変形して単純化していくと、その形態は最終的に直線になります。例えば、コーヒー・カップを同様に変形していくと、ドーナッツと同じになります。そこまで極端に単純化しなくても、地上部と根系の基本形態を考えてみましょう。地上部は茎/枝、根系は主根/枝根と、どちらも主軸があってそれから枝軸が分岐しています。もっとも髭根のような場合もありますが、髭根一本一本が主軸と見なせばいいでしょう。このような形態をも模式図化して描くと、地上部の形態と根系の形態は地面を軸とした対称の関係になります。
植物は自然の環境で育つと、様々な要因の影響を受けて遺伝的に決められた通りの形状にはなりません。特に根系の形状は、生育する土壌の性質によって著しく影響を受けます。生育土壌に含まれる栄養素の量的/質的違い、土壌の物理的性質など、特に後者は根系の形態に大きく影響するでしょう。根の成長のパターンは複雑です。どのように成長していくかは丁度ガラスに入るひびのように複雑で多様です。根の成長様式を不規則な自然の構造や現象を解析するフラクタルという幾何学を使って説明しようという研究者もいます。
ちなみに、植物を水耕あるいは寒天培地で物理的な抵抗がかからないようにして育てると、主根の成長に伴って枝根がほぼ規則的に分枝してきます。お尋ねのつる植物の場合ですが、つる植物も主軸/枝軸の基本構造は同じです。地上部の形態を人為的(あるいは自然に)に変形させても、根系の形態がそれに似せられて変形していくとは考えられません。もっともそういう研究は聞いたことがありませんのでなんとも言えませんが。根系の成長は地上部の成長の具合によっても影響を受けますので、何らかの形態的な変形はあるかもしれませんが、それが相似的に起きるとは考えられません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-12-14
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