質問者:
会社員
武田
登録番号4946
登録日:2020-12-22
社)日本植物生理学会御中みんなのひろば
植物の酸素生産量と世界の二酸化炭素排出量との関係
地球温暖化と植物の生育面積との関係に大変関心があります。「植物」と共に生活出来る様な日本(特に都市)になってほしいと思います。可能な限りその方向へ向かって生活や動きをしようと考えています。
貴「みんなのひろば」を拝読させていただきました。
そこで、質問ですが、
植物の光合成による二酸化炭素の固定量(11~12億トン/年)に対して、酸素生産量と(世界人口70億人が排出している)二酸化炭素はどれ程でしょうか? その限度量も併せてお教えくだされば有難いです。
武田さん
みんなのひろばへようこそ。質問を歓迎します。
我が国のヒトが摂取する必要がある食物エネルギーは、1人1日あたり約2000キロカロリー(2000 × 4.184 x 10 3カロリー = 8.368× 106ジュール:数値A)とされています(1994年、厚生省公衆衛生審議会)。これは、ヒトが健康を維持して活動するための最低必要エネルギーです。一方、国連食糧農業機構(FAO)は、世界平均値で食糧エネルギーとして2940 キロカロリー(2940 × 4.184 × 103カロリー = 12.3 × 106ジュール:数値B)が消費されていると推定しています(2018年)。数値Aは人が生活していくための必要摂取エネルギー量で、現在もほとんど変わっていないと思われます。一方、数値Bは、実際に食料として生産・消費されたものの熱量で、世界人類は全体として過食の状態にあり、そのエネルギーは、生存に必要なもののほかに、肥満、スポーツ、消化せずに排泄などにも多く回っていると推察されます。FAOの値は、1960年ごろは2000キロカロリー/人/日の程度あるいはそれ以下であったアフリカ、アジア(特に、中国、インド、東南アジア等)の食物摂取エネルギーが、2000年代以降は、著しく改善されたことを示しています。
光合成商とは、光合成によって固定される二酸化炭素と放出される酸素のモル比(CO2/O2)をさします。光合成産物が炭水化物だけであれば以下の式に従って,光合成商は1になります。
6CO2+12H2O→C6H12O6+6O2+6H2O
タンパク質や脂質が光合成産物である場合は,化合物は全体として還元的で、その合成に多くの還元力を必要として多くの酸素を排出するので,光合成商はそれぞれ平均0.8あるいは0.7となります。地球全体では、大雑把に言うと、光合成商は0.9程度と見積もってよいでしょう。
さて、地球全体のCO2収支については、IPCC(International Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)が、推定値を発表しています(最新のものは第5次評価レポートAR5 Synthesis Report: Climate Change 2014 — IPCC)。この報告書の数値を基礎に世界の人々が消費しているエネルギー等をまとめると表1のようになります。人類は、食物摂取エネルギーの17倍、あるいは24倍のエネルギーを消費することにより、現在の生活を送っています。
地球全体で見ると、人類の活動増大によるCO2排出の地球環境全体の気候変動に対する影響が懸念されています。地球全体で見ると、大気中のCO2濃度に顕著な増大傾向が確認されており、大気中の濃度は、産業革命前は約280ppm(約0.028%)であったものが、既に約400ppmに達しました。CO2は赤外線を吸収し地球から宇宙への熱放散を妨げるので、大気中のCO2濃度上昇は地球全体が「厚着」をして、地球温暖化を招くことが懸念されています。CO2濃度上昇の原因は、化石燃料の燃焼が最大で、次いで、ヒトの食糧生産のために森林を破壊して農耕地や牧草地に転換したことによる、木材の燃焼や腐植質の分解(呼吸等)や光合成によるCO2の吸収能力の低下などが主なものです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は地球の平均気温を産業革命当時から2℃以内に抑えるためには、地球全体の化石燃料からのCO2排出量を2050年までにほぼゼロにしなければならないという予測も発表しています(インターネットで「IPCC」 を検索語として調べると、有益な情報が得られるでしょう)。
みんなのひろばへようこそ。質問を歓迎します。
我が国のヒトが摂取する必要がある食物エネルギーは、1人1日あたり約2000キロカロリー(2000 × 4.184 x 10 3カロリー = 8.368× 106ジュール:数値A)とされています(1994年、厚生省公衆衛生審議会)。これは、ヒトが健康を維持して活動するための最低必要エネルギーです。一方、国連食糧農業機構(FAO)は、世界平均値で食糧エネルギーとして2940 キロカロリー(2940 × 4.184 × 103カロリー = 12.3 × 106ジュール:数値B)が消費されていると推定しています(2018年)。数値Aは人が生活していくための必要摂取エネルギー量で、現在もほとんど変わっていないと思われます。一方、数値Bは、実際に食料として生産・消費されたものの熱量で、世界人類は全体として過食の状態にあり、そのエネルギーは、生存に必要なもののほかに、肥満、スポーツ、消化せずに排泄などにも多く回っていると推察されます。FAOの値は、1960年ごろは2000キロカロリー/人/日の程度あるいはそれ以下であったアフリカ、アジア(特に、中国、インド、東南アジア等)の食物摂取エネルギーが、2000年代以降は、著しく改善されたことを示しています。
光合成商とは、光合成によって固定される二酸化炭素と放出される酸素のモル比(CO2/O2)をさします。光合成産物が炭水化物だけであれば以下の式に従って,光合成商は1になります。
6CO2+12H2O→C6H12O6+6O2+6H2O
タンパク質や脂質が光合成産物である場合は,化合物は全体として還元的で、その合成に多くの還元力を必要として多くの酸素を排出するので,光合成商はそれぞれ平均0.8あるいは0.7となります。地球全体では、大雑把に言うと、光合成商は0.9程度と見積もってよいでしょう。
さて、地球全体のCO2収支については、IPCC(International Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)が、推定値を発表しています(最新のものは第5次評価レポートAR5 Synthesis Report: Climate Change 2014 — IPCC)。この報告書の数値を基礎に世界の人々が消費しているエネルギー等をまとめると表1のようになります。人類は、食物摂取エネルギーの17倍、あるいは24倍のエネルギーを消費することにより、現在の生活を送っています。
地球全体で見ると、人類の活動増大によるCO2排出の地球環境全体の気候変動に対する影響が懸念されています。地球全体で見ると、大気中のCO2濃度に顕著な増大傾向が確認されており、大気中の濃度は、産業革命前は約280ppm(約0.028%)であったものが、既に約400ppmに達しました。CO2は赤外線を吸収し地球から宇宙への熱放散を妨げるので、大気中のCO2濃度上昇は地球全体が「厚着」をして、地球温暖化を招くことが懸念されています。CO2濃度上昇の原因は、化石燃料の燃焼が最大で、次いで、ヒトの食糧生産のために森林を破壊して農耕地や牧草地に転換したことによる、木材の燃焼や腐植質の分解(呼吸等)や光合成によるCO2の吸収能力の低下などが主なものです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は地球の平均気温を産業革命当時から2℃以内に抑えるためには、地球全体の化石燃料からのCO2排出量を2050年までにほぼゼロにしなければならないという予測も発表しています(インターネットで「IPCC」 を検索語として調べると、有益な情報が得られるでしょう)。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-02-13