質問者:
高校生
りょうすけ
登録番号4949
登録日:2020-12-27
こんにちわ冬芽について
冬芽のしくみついて疑問に思ったことがあります
冬芽には芽麟という被いで守られてるものと
裸芽、被われてないものがあるとネット上で調べたのですが、裸芽だと、北海道のような寒い地域では、なにも被い等で守られていないので、
どのように乗り越えてるのでしょうか、
難しい疑問ですみません。答えられることがあったらよろしくお願いします
りょうすけ 様
植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
植物は冬季に低温と乾燥という厳しい環境にさらされるわけですが、樹木は冬芽をつくることによってその厳しい環境を凌いでいます。温帯の樹木では秋から冬にかけて、気温が低下し、日長がみじかくなっていくとアブシシン酸という植物ホルモンが合成されてきて、それが原因になって茎頂は成長をやめて休眠状態に入っていきます。翌年伸びる葉は、一番若い葉を内側につぎつぎ若い順に畳み込まれた冬芽(越冬芽)になります。多くの樹木の冬芽は芽鱗とよばれる鱗片葉で覆われ、内部の芽を低温や乾燥から保護しています。芽鱗は葉身、葉柄、托葉など葉のさまざまな部分が鱗片状に変化したもので、頑強で防水性があり、さらに樹脂、ガム、蠟などで補強されています。芽鱗の数は植物種によって異なりミヤマハンノキのように1枚のものから、ミズナラのように40枚もあるものもあります。
一方、冬芽に芽鱗がない植物種も多数知られています。このような冬芽を裸芽といいます。アカメガシワ、エゴノキ、オニグルミ、ナツツバキ、ヌルデ、サンショウ、マンサクなどが裸芽を持つ植物の例です。裸芽の場合は一番外側の葉が内部の葉を保護する役目をします。ヤマボウシやアメリカハナミズキのように非常に硬くなるものもあります。芽鱗をつくる植物はブナやミズナラのように寒い地方に生育する植物に、裸芽の植物はクサギやエゴノキのようにやや暖かい場所に生育する樹木に多い傾向があります。芽鱗を作らないのは、芽鱗を作るのに要するエネルギーの消費より、低温による障害を受けるリスクの方を選んだのではないかという考えもあります。
前置きが長くなりましたが、これからがりょうすけさんの質問への回答です。上記のように、確かに芽鱗は構造的に低温障害から若い芽を守っていますが、芽鱗を持たない植物の冬芽が低温にまったく無防備ということはありません。低温障害の原因のもっとも大きなものは、細胞内に氷の結晶ができて機械的に細胞を破壊したり、脱水によって膜構造を破壊することです。植物が徐々に低温にさらされる(順化といいます)と糖(グルコースなど)、アミノ酸(プロリンなど)などの量が増加して氷点降下がおきます(凍りにくくなります)。順化の過程で細胞膜の脂質やたんぱく質の構成が変化して障害を受けにくくなります。また、不凍活性をもつたんぱく質が作られ、細胞間隙における大型の氷晶を形成するのを抑制することで細胞の障害を軽減します。このように順化過程でおきるいろいろな変化は氷点下(-40℃という場合もあります)での植物の生存(耐凍性)に寄与しますが、これは芽鱗の有無に関係なくおこります。
耐凍性についての詳しい説明は登録番号1123, 1194,1202 をご覧になって下さい。
りょうすけさんは前にも何回か樹木に関する質問をされていますが、樹木が大好きなようですね。樹木の観察を続けて面白いことを見つけられたら、教えて下さい。
植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
植物は冬季に低温と乾燥という厳しい環境にさらされるわけですが、樹木は冬芽をつくることによってその厳しい環境を凌いでいます。温帯の樹木では秋から冬にかけて、気温が低下し、日長がみじかくなっていくとアブシシン酸という植物ホルモンが合成されてきて、それが原因になって茎頂は成長をやめて休眠状態に入っていきます。翌年伸びる葉は、一番若い葉を内側につぎつぎ若い順に畳み込まれた冬芽(越冬芽)になります。多くの樹木の冬芽は芽鱗とよばれる鱗片葉で覆われ、内部の芽を低温や乾燥から保護しています。芽鱗は葉身、葉柄、托葉など葉のさまざまな部分が鱗片状に変化したもので、頑強で防水性があり、さらに樹脂、ガム、蠟などで補強されています。芽鱗の数は植物種によって異なりミヤマハンノキのように1枚のものから、ミズナラのように40枚もあるものもあります。
一方、冬芽に芽鱗がない植物種も多数知られています。このような冬芽を裸芽といいます。アカメガシワ、エゴノキ、オニグルミ、ナツツバキ、ヌルデ、サンショウ、マンサクなどが裸芽を持つ植物の例です。裸芽の場合は一番外側の葉が内部の葉を保護する役目をします。ヤマボウシやアメリカハナミズキのように非常に硬くなるものもあります。芽鱗をつくる植物はブナやミズナラのように寒い地方に生育する植物に、裸芽の植物はクサギやエゴノキのようにやや暖かい場所に生育する樹木に多い傾向があります。芽鱗を作らないのは、芽鱗を作るのに要するエネルギーの消費より、低温による障害を受けるリスクの方を選んだのではないかという考えもあります。
前置きが長くなりましたが、これからがりょうすけさんの質問への回答です。上記のように、確かに芽鱗は構造的に低温障害から若い芽を守っていますが、芽鱗を持たない植物の冬芽が低温にまったく無防備ということはありません。低温障害の原因のもっとも大きなものは、細胞内に氷の結晶ができて機械的に細胞を破壊したり、脱水によって膜構造を破壊することです。植物が徐々に低温にさらされる(順化といいます)と糖(グルコースなど)、アミノ酸(プロリンなど)などの量が増加して氷点降下がおきます(凍りにくくなります)。順化の過程で細胞膜の脂質やたんぱく質の構成が変化して障害を受けにくくなります。また、不凍活性をもつたんぱく質が作られ、細胞間隙における大型の氷晶を形成するのを抑制することで細胞の障害を軽減します。このように順化過程でおきるいろいろな変化は氷点下(-40℃という場合もあります)での植物の生存(耐凍性)に寄与しますが、これは芽鱗の有無に関係なくおこります。
耐凍性についての詳しい説明は登録番号1123, 1194,1202 をご覧になって下さい。
りょうすけさんは前にも何回か樹木に関する質問をされていますが、樹木が大好きなようですね。樹木の観察を続けて面白いことを見つけられたら、教えて下さい。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-12-31