一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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つる植物はにおいを感じている?

質問者:   その他   高野久仁子
登録番号0495   登録日:2006-01-31
一月三十日にこちらに質問させて頂いた子供に付き合って、つる植物の生長のしくみとにおい物質との関係を調べています。
この件については、以前別のところで質問したところ、このすばらしいHPを紹介してもらいました。
実験のきっかけは、朝顔の生長量を調べる為にマニキュアやマジックインキで印をつけると決まって動きが止まってしまう事に気づいたからです。
が、そもそもつる植物がどんなにおいを感じるか?という実験は意味のあるものになるのでしょうか?
もしあるとするならば、次の事を教えて下さい。

1. 説得力のある研究にする為にはデータを増やす必要があると思いますが、ひと夏に同一の実験を2回ずつ行って3年分のデータがあるのですがこれではまだ少ないでしょうか?
どれ位のデータが必要でしょうか。  

2.つる表面にワセリンで被膜を作ってから、においの入った容器に入れる実験をしたのですが、極力薄く塗っても全体に塗るせいかワセリンがぼてぼてに重すぎて、つるが首振りしにくそうです。
代わりに良い素材はありませんか。ワセリンは薄めずにそのまま使っています。(油、墨汁も試してみました)

3.揮発性のにおいでつるの首振り運動に影響があるのは、イメージとしてはわかる気がしますが、そんな小さな世界の事をどう証明できるのでしょうか。
また、揮発性があるとは思えない蚊取り線香のにおいでも首振りがゆっくりになったり、止まったりするのは何故でしょうか。

4 つるに複数色のワセリンを数本、縦じま状にぬって観察したところ、縦じまのもようが螺旋状にねじれて生長してた事と、実験Eの結果から次のように仮説を考えました。


ア. つるの細胞は、同じ横断面で見た時に、時計と反対周りに時間差で細胞分裂していて、それが生長量の差として首振りが起こる。
イ. つるの細胞は分裂する時に教科書にあるように真横?に分裂するのではなく、斜めの位置にゆがんで(説明が難しいですが)並ぶので、そのねじれの結果首振りが起こる。

でも、これを確かめる実験がどう考えてもわかりません。ヒントだけでも教えて下さい。
(粘土でモデルを作れないでしょうか)
高野久仁子さま

 みんなの広場へのご質問有難うございました。大変おまたせ致しましたが、ご質問に対するお答えをお送りいたします。50年よりもっと昔、ヒマワリが光のほうに向って曲る時、茎の光の側と陰の側の生長がどうなっているのかを調べたことがあるのですが、本で読んだのか、誰かに教えて貰ったのか、墨を摺って、その墨で印をつけました。当時、マジックインクはなかったのと、マニキュアには縁がなかったからか、そういう物は使いませんでした。マジックインクやマニキュアで印をつけたら動きが止まってしまったとありましたが、マジックインクやマニキュアから出て来た匂い(気体の状態の物質)によると言うよりは、マジックインクやマニキュアが、印を付けた場所の細胞を殺してしまったことによるものと思います。マジックインクやマキュアの匂いが影響を与えていることを示すためには、そのようなものを茎に塗らないで、植物から離しておいて、その影響を見る必要があります。ということで、つる植物が、どんな匂いに感じているのかを調べる場合、密封できる容器の中に植物を入れ、匂いを出すものが入った小さな容器を、植物から少し離して置いておく必要があります。ご質問にたいする回答に入ります。

1. どのくらい繰り返さなければならないかは、処理したものと処理していないものとの違いがどれくらいあるかによって違います。ある物を処理したら、運動が止まってしまったような場合、2回も繰り返せば十分と思いますが、運動の速度が低下したような場合、低下の度合いで、必要な繰り返しの回数は変わります。統計処理が必要でしょう。

2. ワセリンで匂いの物質(気体の物質)の侵入を遮断することは出来ないと思います。また完全に気体の物質の侵入を遮断したとしたら、植物は死んでしまいますので、匂いの物質の侵入を遮断する実験は不可能です。光の通る大きな容器に植物を入れ、その横に、匂いの物質の入った小さな容器を置き、匂いの物質の効果を調べることになると思いますが、匂いの物質が植物に近づかないようにするのには小さな容器に蓋をするくらいしか考えつきません。

3. 火をつけた香取り線香からはいろいろな物質が気体として出て来ます。そうした物質の中に首振りを抑える物質が含まれていたとしても不思議ではありません。まず、首振りが低下するのは、何故か(例えば茎の生長速度は低下していないかどうか)などについて調べて下さい。首振りを抑えている物質についてのヒントはみずきさんへの回答の中に書いてあります。

4. 面白い発見だと思います。つる植物以外の植物ではどうかなど調べてみるのも面白いと思います。仮説については顕微鏡が使えるのなら、分裂面の観察をしてみたらどうでしょう。茎の伸びの制御には表皮細胞(一番外の細胞)が重要な役割を演じているとされていますので、表皮の観察が有効と思います。表皮の観察には、無色のマニキュアを茎に塗り、乾いた後で剥がして、顕微鏡で見るなどの方法がありますが、マニキュアを塗ると細胞は死んでしまうので、もし手に入れば歯医者さんが型を取る時に使っているデンタル・シリコンラバーを使って、茎の表面の型を取り、その型にマニキュアを塗ってまた型をとる方法がお薦めです。茎が捩じれて伸びる原因はいろいろあると思いますが、その一つに、細胞がどんな伸び方をするかがあります。細胞の伸長は、細胞を包んでいる細胞壁の性質によって決まっており、細胞壁はとても複雑な構造をしていますので、単純な粘土のモデルでは手に負えないと思います。
 首振り運動は古くから知られていますが、その機構は分っていません。茎の伸びにともなって、表皮の細胞がどのように伸びるのかの観察が、なにかヒントを与えてくれるかも知れません。
JSPPサイエンスアドバイザー
 柴岡 弘郎
回答日:2006-02-10
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