質問者:
高校生
りょうすけ
登録番号4951
登録日:2021-01-01
こんにちわ 今年もよろしくお願いします。みんなのひろば
オニグルミやホオノキのアレロパシー
いつも質問に答えてくれて心から感謝しています。ありがとうございます。
今回、凄く気になっていることが、オニグルミや
ホオノキにはアレロパシーというのがあり、周囲には他の木々が育たないという情報を聞き何度も調べているのですが、
実際自生してる様々なオニグルミ、ホオノキの、観察をしてても、普通に多数の樹種が2m、3m、と周囲または、木の下に普通に生えて普通に毎年成長もしているので、これは実際にクルミやホオにはアレロパシーがある物質等は、分泌されているのか、凄く気になっています。
毎度、非常に細かな質問になってしまいすみません もし答えられることがあったらよろしくお願いします。
りょうすけ君
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。何度もこのコーナーへ訪問下さってありがとう。
アレロパシー(他感作用)については本コーナーですでに沢山の関連質問が取り上げられていますから、もう目を通しておられることかと思いますが、まだでしたら、「アレロパシー」で検索して、関連質問/回答を読んでさい。ここではアレロパシー自体のことについての説明は省いて、オニグルミ(Juglans mandchurica var. sachaliensis) とホオノキ(Magnolia obovata)のことに限って説明します。アレロパシーを示す植物の種類はきわめて多く、草本、木本植物のどちらにも報告されています。クルミの仲間のアレロパシーは2000年も前にローマのプリニウスが記載しています。その作用については19世紀の終わり頃から20世紀の始め頃にかけて何人かの研究者によって研究が進められ、1928年にDavis, E. F. はクロクルミ(Juglans nigra) の樹皮からその本体を突き止めてジュグロン(juglone)と名付けました(The toxic principle of Juglans nigra as identified with synthetic juglone and its toxic effects on tomato and alfalfa plants. Am. J. Bot. 15, 620)。
オニグルミにアレロパシー活性があり、ニセアカシアの実生の成長を阻害するという研究報告もあります。jugloneはクルミの仲間には共通して存在しているようです。Juglone は化学的にはモノテルペンと呼ばれる炭素数10からなる一群の化合物の仲間です。ホオノキ自体のアレロパシー物質が同定されているかどうかはわかりませんが、同じ仲間のタイザンボク(Magnolia grandiflolia) のアレロパシー物質として、コスツノライド(costunolide) とパルテノライド(parthenolide)という物質が得られています。この二つは炭素数15のセスケテルペンの仲間です。アレロパシー物質(allerochemicals)は一般には多くの植物の発芽や成長を抑制する、いわば成長阻害物質です。種類も様々です。自然界ではよく観察するとこれらの樹木の周りでは、芽生えの数が少ないか、抑制された成長が見られます。アレロパシー物質が出されると他の植物は全く育たないというわけではありません。All or none ではありません。その効果の大きさは、本体(根、葉、樹皮、果実など)から分泌されたり、周囲に落ちたものから滲み出たりしたアレロケミカルの量にもよります。また、雨水などで阻害物質が希釈されたり、洗い出されたりすることもあるでしょう。植物の種類によっては影響を受けないものも多々あります。また、アレロパシー活性のある樹木が若いときに、その樹の周囲で一緒に他の樹木が育ったらあまり影響は受けないかもしれません。クルミやホオノキから直接あるいは脱離した様々な器官を集めて、土壌に混ぜ、いろいろな植物の芽生えを植えたり、種子をまいたりしてどうなるか観察してみてはどうでしょうか。
これからもどんど質問してください。大歓迎です。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。何度もこのコーナーへ訪問下さってありがとう。
アレロパシー(他感作用)については本コーナーですでに沢山の関連質問が取り上げられていますから、もう目を通しておられることかと思いますが、まだでしたら、「アレロパシー」で検索して、関連質問/回答を読んでさい。ここではアレロパシー自体のことについての説明は省いて、オニグルミ(Juglans mandchurica var. sachaliensis) とホオノキ(Magnolia obovata)のことに限って説明します。アレロパシーを示す植物の種類はきわめて多く、草本、木本植物のどちらにも報告されています。クルミの仲間のアレロパシーは2000年も前にローマのプリニウスが記載しています。その作用については19世紀の終わり頃から20世紀の始め頃にかけて何人かの研究者によって研究が進められ、1928年にDavis, E. F. はクロクルミ(Juglans nigra) の樹皮からその本体を突き止めてジュグロン(juglone)と名付けました(The toxic principle of Juglans nigra as identified with synthetic juglone and its toxic effects on tomato and alfalfa plants. Am. J. Bot. 15, 620)。
オニグルミにアレロパシー活性があり、ニセアカシアの実生の成長を阻害するという研究報告もあります。jugloneはクルミの仲間には共通して存在しているようです。Juglone は化学的にはモノテルペンと呼ばれる炭素数10からなる一群の化合物の仲間です。ホオノキ自体のアレロパシー物質が同定されているかどうかはわかりませんが、同じ仲間のタイザンボク(Magnolia grandiflolia) のアレロパシー物質として、コスツノライド(costunolide) とパルテノライド(parthenolide)という物質が得られています。この二つは炭素数15のセスケテルペンの仲間です。アレロパシー物質(allerochemicals)は一般には多くの植物の発芽や成長を抑制する、いわば成長阻害物質です。種類も様々です。自然界ではよく観察するとこれらの樹木の周りでは、芽生えの数が少ないか、抑制された成長が見られます。アレロパシー物質が出されると他の植物は全く育たないというわけではありません。All or none ではありません。その効果の大きさは、本体(根、葉、樹皮、果実など)から分泌されたり、周囲に落ちたものから滲み出たりしたアレロケミカルの量にもよります。また、雨水などで阻害物質が希釈されたり、洗い出されたりすることもあるでしょう。植物の種類によっては影響を受けないものも多々あります。また、アレロパシー活性のある樹木が若いときに、その樹の周囲で一緒に他の樹木が育ったらあまり影響は受けないかもしれません。クルミやホオノキから直接あるいは脱離した様々な器官を集めて、土壌に混ぜ、いろいろな植物の芽生えを植えたり、種子をまいたりしてどうなるか観察してみてはどうでしょうか。
これからもどんど質問してください。大歓迎です。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-01-22