一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ハマナスの実についている巨大な角(?)

質問者:   その他   yo ba
登録番号4956   登録日:2021-01-05
ハマナスの実の尻尾部分には、実本体の長さの何倍もあるような角(?)が5本位、立っています。

1.あの角はそもそも何ですか?
2.あの角は何の役に立っているのですか?

都内のカルチャースクールと高校で植物の講師をしております。授業の中で採り上げたいと思っております。
yo ba様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ハマナス(Rosa rugosa)はローズ・ヒップと同じ仲間で、その果実は形態学上「偽果」と呼ばれるものです。リンゴ、ナシ、ビワなどの果実と同じように可食部分は子房ではなく花托が発達したものです(偽果については登録番号4706, 4713を読んでください)。
果実の尾部の5本の突起は萼(片)の発達したものです。サイズが本体の何倍もあるということですが、そんなに長い例は見たことがありません。せいぜい長くて1.5倍くらいではないでしょうか。ハマナスの花の蕾をご覧になると緑色の萼片が蕾を覆うように周囲にまとわりついています。萼は他の花でもそうですが、第一の役割は蕾を外敵や低温などの負の環境要因から守ることにあります。また、光合成によって栄養分の補給に役立っている場合もあります。開花後結実期に入ると萼は枯れて用無しになることもありますが、残って花の機械的支持や保護に役立っている場合もあります。
果実全般において、果実が成熟後(postharvest)も萼が枯れないで残っている場合はどんな役割があるのかについては幾つか研究がなされています。本コーナーでも関連質問がありますので、読んでください(登録番号2908)。ハマナスの場合は萼は枯れないで、花托が肥大して果実となるにつれてツボの口をふさぐように尾部に絞り込まれ、あのように角状を示します。その役割についての研究例は見当たりませんでしたが、想像を巡らすと、害虫が内部に侵入し難いようにしているとか、あるいは食害生物の忌避物質を作りだしているのかもしれません。しかしこれは単なる思いつきです。
もし、今年時間がありましたら、ハマナスが結実する頃萼片を人為的に削除して正常なもの(対照)と比べてどんな差を生じるか観察してみると面白いかもしれませんね。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-01-10
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