一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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霜害と凍害

質問者:   会社員   sssss
登録番号4960   登録日:2021-01-09
オキザリスを育てています。オキザリスは霜には耐えられないけど、植物が凍結する分には問題ないと聞いたことがあります。
霜害と凍害で、ダメージの大きさが違うということはあるのでしょうか?
sssssさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「オキザリス」は、カタバミ科のオキサリス属(Oxalis属)の植物すべてを指す用語です。日本にもOxalis属植物は路傍、畑、山野に多く自生しています。今では「雑草」として邪魔者扱いされている黄色い花のカタバミ(Oxalis corniculata)は代表的なものでしょう。Oxalisの仲間には、根茎(あるいは塊茎、鱗茎)をつくるもの(イモカタバミと言う、ムラサキカタバミ、ハナカタバミなど)とつくらないもの(カタバミなど)があります。観賞用に市販されているOxalisは南米、南アフリカなどから輸入されたイモカタバミの仲間(一般に花が大型で鮮やかな色調を示す)が品種改良されたもので、たくさんの園芸品種があります。一般には低温に耐性があるとされていますが、その幅も広いものです。
「オキザリスは霜には耐えられないけど、植物が凍結する分には問題ない」と言われる根拠は判りませんが、次の様なことは考えられます。霜は、氷点下にある物体表面に空気中の水分が凍ったものですから、植物が氷点下におかれ茎葉の表面に氷が付着した状態です。通常、このような状態になっても温帯以北に自生する植物は容易に傷害を受けません。熱帯性の植物の生体膜は氷点下以上の低温では生体膜の流動性が低下するリン脂質で出来ていますので低温では容易に細胞が破壊されます(バナナを冷蔵庫に保存すると黒褐色に変化するのはその例です)が温帯以北にある植物の生体膜は低温になってもその流動性を失わないリン脂質からできています。しかし、植物体が急速に氷点下におかれるときに細胞内の氷結晶形成の状況によっては細胞の構造が、形成され成長する氷結晶によって物理的に破壊される場合、あるいは細胞壁内にある水の氷結によって細胞質の水が細胞外に移動して細胞は水不足になり傷害を受ける場合があり得ます。しかし凍結を問題にするときには植物は徐々に(ゆっくりと)氷点下低温にさらされる場合で、低温状態に繰り返しおかれ、その間に低温順応が起こり氷点下におかれても細胞内の水は容易に氷結しない状態が起こります(純粋の氷結温度では、海水や砂糖水は氷結しませんね)。例えば、低温馴化の過程で一種の糖類やアミノ酸類などが合成蓄積され細胞質は氷結しにくい状態になります。高山や極地帯にある森林を形成する植物の多くは凍結温度が到来するまでに、このような凍結耐性を獲得して冬を生き抜いています。
植物の凍結耐性については、登録番号3205, 2381, 1194, 1123をご参照下さい。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-01-25
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