一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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緑体春化と早晩生について

質問者:   自営業   ミント
登録番号4968   登録日:2021-01-20
緑体春化について調べていたところ、ブロッコリーなどでは早生品種は晩生品種より低温要求度が低く、抽苔しやすいとありました。早生の方が生殖生長に移る条件が緩いようでした。

ですが、同じ緑体春化型のタマネギの早生品種は晩生品種より抽苔しにくいそうなのですが、なぜ逆なのでしょうか?

・品種改良で晩抽性にした結果?
・低温要求度は低く花芽分化のスイッチは入るけど、肥大・休眠の条件の方が抽苔の条件より早く整ってトウ立ちが避けられる?

解釈の仕方がわからず、質問致しました。
よろしくお願いします。
ミント 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。
ご質問には植物の開花現象について詳しい後藤弘爾博士(岡山県・生物科学研究所)から下記の回答文を頂戴しましたので参考になさってください。

【後藤博士からの回答】
品種の早生か晩生かというのは、ヒトが食べる部分を基準にして決めているようです。ブロッコリーは花芽を食べるので、早生品種はそのまま花成(花芽分化のスイッチを入れること)が早い品種ということになります。一方、タマネギの早生品種は、花成が早く起きるのではなく、結球が早く起きる品種なので、ミントさんの2番目の解釈、「肥大・休眠の条件の方が抽苔の条件より早く整ってトウ立ちが避けられる」と考えるのが妥当だと思います。

もう少し詳しく考えてみます。ブロッコリーなどのアブラナ科の植物については、春化についてよく研究されています。それによると、花成シグナルは、日長条件によって生じるのですが、花成シグナルを抑制する因子が有り、一定期間の低温にさらされることで、その抑制因子が働かなくなり(この現象が春化)、花成が起きるようになります。この春化応答によって、植物は春と秋を区別していると言われています。アブラナ科の早生品種の多くは、変異により抑制因子が壊れており、低温を与えなくても花成が進行すると考えられます。タマネギの結球は、温度条件と栄養条件が調った時に、長日条件によって開始され、タマが肥大すると休眠状態にはいります。タマネギの花成は低温条件(春化)に続いた長日条件によって引き起こされます。タマネギの早生品種は春化応答が起きる前に、結球、肥大し休眠に入るため抽薹しにくいのだと考えられます。ちなみに、タマネギの結球を引き起こすシグナルと花成シグナルとは非常によく似た分子が使われていることが研究で明らかにされています。
後藤 弘爾(岡山県農林水産総合センター・生物科学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2021-02-14
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