質問者:
中学生
よじゅま
登録番号4972
登録日:2021-01-23
私達は中学3年生なのですが学校の研究活動でシロイヌナズナの細胞壁の厚さを測定したいと考えています。そこでどのような方法があるのか教えていただきたいです。研究環境としては倒立顕微鏡(OLYMPUS CKX31)、クライオスタッド(LEICA CM3050 S)等があります。みんなのひろば
細胞壁の厚さの測定方法について
よろしくお願いいたします。
よじゅま様
植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
顕微鏡で物の長さ(厚さ)を測るときにはミクロメーターを用います。ミクロメーターには接眼ミクロメーターと対物ミクロメーターがあります。それぞれのミクロメーターには一定間隔の目盛が刻んであります。
測り方をごく簡単に解説しますと、まず接眼ミクロメーターは接眼レンズの中に入れ、対物ミクロメーターはステージの上に置きます。接眼レンズをのぞいて、接眼ミクロメーターの目盛と対物ミクロメーターの目盛が重なる2か所を見つけます。2か所の間の接眼ミクロメーターの目盛の数と対物ミクロメーターの目盛も数をかぞえます。そうしますと、
接眼ミクロメーターの1目盛の長さ X 接眼ミクロメーターの数 =
対物ミクロメーターの1目盛の長さ X 対物ミクロメーターの数
という関係が成り立ちます。対物ミクロメーターの目盛の間隔がわかれば(1mmを100等分するなど決まっています)、接眼ミクロメーター1目盛の長さが、ステージにおけるどのくらいの長さに対応するかを計算できます。
次にステージの対物ミクロメーターを測定したい試料のプレパラートに置き換え、試料の長さを接眼ミクロメーターで測り、その目盛の数を長さに換算します。細胞の大きさなどをこの方法で測ることができます。
光学顕微鏡を用いて細胞壁の厚さを測るというテーマを考えられたのは面白いですね。しかし、残念ながら、普通の光学顕微鏡を用いて測定するのは難しいと思われます。その理由を説明します。
小さな物体を顕微鏡で見ようと思って倍率を上げていくと物体の像がぼやけてしまいます。当初は顕微鏡の性能の問題かと思われていたのですが、アッベの式が提案されて、顕微鏡の問題ではなく使用する光源の問題だということがわかったからです。アッベの式というのは、 d=λ/2N.A. というものです。
dは識別可能な2点間の距離、λは光源に用いた光の波長、N.A.は対物レンズの開口度でレンズによって決まっています。最大で1.4です。例えば開口度が最高の1.4である対物レンズを用い、540nmの波長の光源を用いて観察すると識別可能な2点間の距離は大まかに言って200nmになります(アッベの式に代入してみて下さい)。針葉樹の仮道管のように細胞壁の厚さが200nmを越すものもありますが、多くの場合細胞壁の厚さは5~100nmと言われています。2点間の識別ができない長さです。厚さをはかるのには、細胞壁の内側と外側の境界がはっきり観察できることが必要ですが、その間隔が観察できるのは厚さが200nm以上あることが必要ですので、測るのは難しいだろうという結論になります。
識別可能な2点間の距離を短くするためには、波長が短い光源を用いた走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などが開発されています。
植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
顕微鏡で物の長さ(厚さ)を測るときにはミクロメーターを用います。ミクロメーターには接眼ミクロメーターと対物ミクロメーターがあります。それぞれのミクロメーターには一定間隔の目盛が刻んであります。
測り方をごく簡単に解説しますと、まず接眼ミクロメーターは接眼レンズの中に入れ、対物ミクロメーターはステージの上に置きます。接眼レンズをのぞいて、接眼ミクロメーターの目盛と対物ミクロメーターの目盛が重なる2か所を見つけます。2か所の間の接眼ミクロメーターの目盛の数と対物ミクロメーターの目盛も数をかぞえます。そうしますと、
接眼ミクロメーターの1目盛の長さ X 接眼ミクロメーターの数 =
対物ミクロメーターの1目盛の長さ X 対物ミクロメーターの数
という関係が成り立ちます。対物ミクロメーターの目盛の間隔がわかれば(1mmを100等分するなど決まっています)、接眼ミクロメーター1目盛の長さが、ステージにおけるどのくらいの長さに対応するかを計算できます。
次にステージの対物ミクロメーターを測定したい試料のプレパラートに置き換え、試料の長さを接眼ミクロメーターで測り、その目盛の数を長さに換算します。細胞の大きさなどをこの方法で測ることができます。
光学顕微鏡を用いて細胞壁の厚さを測るというテーマを考えられたのは面白いですね。しかし、残念ながら、普通の光学顕微鏡を用いて測定するのは難しいと思われます。その理由を説明します。
小さな物体を顕微鏡で見ようと思って倍率を上げていくと物体の像がぼやけてしまいます。当初は顕微鏡の性能の問題かと思われていたのですが、アッベの式が提案されて、顕微鏡の問題ではなく使用する光源の問題だということがわかったからです。アッベの式というのは、 d=λ/2N.A. というものです。
dは識別可能な2点間の距離、λは光源に用いた光の波長、N.A.は対物レンズの開口度でレンズによって決まっています。最大で1.4です。例えば開口度が最高の1.4である対物レンズを用い、540nmの波長の光源を用いて観察すると識別可能な2点間の距離は大まかに言って200nmになります(アッベの式に代入してみて下さい)。針葉樹の仮道管のように細胞壁の厚さが200nmを越すものもありますが、多くの場合細胞壁の厚さは5~100nmと言われています。2点間の識別ができない長さです。厚さをはかるのには、細胞壁の内側と外側の境界がはっきり観察できることが必要ですが、その間隔が観察できるのは厚さが200nm以上あることが必要ですので、測るのは難しいだろうという結論になります。
識別可能な2点間の距離を短くするためには、波長が短い光源を用いた走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などが開発されています。
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2021-02-08
庄野 邦彦
回答日:2021-02-08